いずぼぺ

グッバイ、レーニン!のいずぼぺのレビュー・感想・評価

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
3.7
東西ドイツ統一前後の東ベルリンが舞台。
父は女性と西ドイツへ亡命、取り残され心を病んだ母は社会主義国家への忠誠を強めていく。そんな母が心臓発作で昏睡状態となっている間に歴史は動く。ホーネッカー書記長は退任、ベルリンの壁は崩壊、資本主義の津波はあっという間に東ベルリンを飲み込んでゆく。たいした主義主張があるわけでないアレックスや旧東ドイツ市民が資本主義に慣れていくのは容易なことだった。そんな資本主義ライフがはじまったある日、母の意識は戻る。彼女の記憶は社会主義国家のまま。精神的ショックを与えると、命に関わるといわれてアレックスは奮闘する。すっかり資本主義ナイズされた家を旧体制時代に戻すため!粗大ゴミを漁り、リサイクルショップを回り、ニュース番組を自作して時代を留めようとする。巻き込まれたご近所、友達、家族で「崩壊しなかった社会主義国家」をでっち上げはじめる。アレックスが作り上げた虚構の社会主義国家は図らずも理想の社会主義国家に近づいていく。とにかく、協力してくれる友達が優しい!
理想と現実、虚構と現実。隠したかった真実。
それは国にも、アレックスにも、母にもあった。
遠く離れた宇宙から見下ろせば、ちっぽけな地球。ちっぽけな国。ちっぽけなイデオロギー。ちっぽけなシステム。
でも、その中で暮らしていくには飲み込まれていくしかない。そうやってマトリョーシカのように真実は優しい嘘と無責任な嘘や虚構で幾重にも隠されてしまうんじゃないかな。
コミカルで少し切なく、あったかい気持ちに包まれる作品。
143