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グッバイ、レーニン!のAcneのネタバレレビュー・内容・結末

グッバイ、レーニン!(2003年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ドイツ統一の事実を意識不明だった母親にバレないために、主人公アレックスが奮闘するお話。

母親の病気、ドイツ統一による失業などシリアスな問題を取り扱っているが作風は比較的明るめです。

少し無理矢理には感じましたが、
病のため、社会主義者の母親にドイツ統一の事実をバラさないようにしないといけないという 設定が良いですね。

映画を通して西ドイツ側に統一された東ドイツの厳しい現実が色々と描かれているのも、本作の見所になっている。

前半は誤魔化すための奮闘ぶりが面白かったですが、
後半は家族の人間ドラマでグッときてしまうようになっている。

母親が何故、父親がいなくなってからより強い社会主義者になっていったのか?
それに深く関わっていた、父親の失踪の真実はナルホドときてしまいました。

子供を守るためというのもあって、
あそこまで強い信者になっていったという事情があった事に少し泣けましたね。

最後のドイツ統一のニュースも見事でしたね。
西ドイツ側に統一された事実を 全く逆に伝える事で、母親も納得させてしまうというのは、なるほど となりました。

しかし、このシーンで印象的なのは 母親の表情であろう。
少し嬉しそうに緩んだ顔は 明らかに このニュースがでっち上げで、ドイツ統一の真実を既に知っている顔でした。
母親の視線がテレビではなく、アレックスに向いていたのが凄く印象的なので、気づいた人も多いであろう。

きっとララから教えてもらっていたとは思うが、この事を気づくと このシーンでの
母親の「素晴らしいわ」というセリフの本当の意味が変わってくる。

でっち上げのドイツ統一のニュースにではなく、
ここまで自分の為にやってくれる
アレックスの母に対する愛の深さ に対しての言葉であったと思うと 自然と涙が出そうになりました。


このシーンでの母親役の女優の演技は本当に素晴らしかった。

決して言葉で言わないが表情だけで観客側に全てを察しさせてくれる演出で、
この演出で作品全体をワンランク上の作品にしてくれた気がします。

きっと彼女自身も何処かで、
資本主義によるドイツ統一をどこかで願っていたからこそ、この事実を受け入れる事が出来たのだと勝手に解釈しています。


他にも行方知らずであった父親が危篤状態の母親と再会するシーンは、
映画では描かれていない長年の思いを考えると 、またグッときてしまうようになっている。

最後まで彼等の会話は描かれなかったが、一体どういった事を話していたのか気になりますね。
そしてこの映画はフィクションですが、
もっとこの作品以上に辛い現実の物語があったのでしょうね。

ドイツの歴史を上手く扱った、良い映画でした。
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