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逃げた女のssのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
4.1
久しぶりに映画館行けて幸せ。初ホン・サンスだったけど、韓国映画にしてはエンタメ性から離脱した感じがあって面白い。ポルトガル映画っぽい時間演出がめっちゃ良くて、一貫して何も起こらないのにずっと追っていたくなる映画。ワンシーンワンカットの構成がロイ・アンダーソンぽい。フィックスした画面の中で美術の素晴らしさが光り、所々差し込まれる恣意的なズームアップが、ワンカットの中で無邪気な演出として大事なエッセンスになっている。かなり挑戦的な時間・空間演出なのでは?人間たちの空間に佇まう鶏や猫も、人間たちの小競り合いや悩みの渦中に置かれることで、そういった問題が些細に感じられるように演出されているように思う。そんな悩みなんて宇宙レベルで見れば些細なもんさ的な視点を、人間とは別の世界で生きている動物で表現している、環世界引用が知的だなと感じた。
主人公の女も好きかどうかと尋ねられて理性的に好きだとしている夫から初めて離れて、過去の知人を訪ね、最終的に立ち寄った映画館を出たと思ったらもう一度戻ってくるあたり、人は何かから逃げたくなっても結局帰りたくなってしまうもの、的な顛末なんだろうか。ホン・サンスの空気感と知的さめちゃくちゃ好きになった。

2021 #68
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