パケ猫パケたん

逃げた女のパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
3.5
ポスターに曳かれて鑑賞。

品のいい肌色の背景に、レトロで丁寧な
フォントで描かれたタイトル。

溝口健二監督の、レジタル・リマスターDVD集のジャケットによく似ていたので、観たいと反応して鑑賞。

韓国映画界の鬼才として、ホン・サンス監督の名前は知っていたが、初めての鑑賞。

まず、溝口監督と同じで、ロングテイクの画面で慶んだ。

溝口の場合は、撮影前に、ガチガチに構図を決めて、緊迫した演技を俳優たちに、要求する。驚いた事に、ホン・サンス監督は、溝口と全く反対な、ロングテイクのアプローチだった。面白い。

構図も二人が座っているだけ、みたいな平凡なものが多く、会話は自由で自然な感じ、くだけている感じ。

話しの内容で、興味的に見えた瞬間の女性に、いきなりズームインするカメラに驚いた。あたかも、カメラマンの気紛れな感じのズームインであり、こんなアドリブなど、溝口とかのロングテイクの作法では、到底考えられない驚き。

更に、ロングテイクの画面の最後として、意味もなくカメラは横移動をして、室外の風景などを撮ってしまう、気紛れさ。溝口の『山椒大夫』(1954)とか、ゴダールの『軽蔑』(1963)の感極まっての横移動撮影との、有名な逸話は、無視しまくっている。

だから、ホン・サンスのロングテイクは、なかなかの珍味であり、そのカメラワークの虜になりそうな魅力は確かに感じた。

そして、最初から、サブリミナル的に溝口の映画を意識される、この『逃げた女』のポスターは、いい仕事をしてますね~、(←なんでも鑑定団の、中島誠之助氏の声で。)と感心する。

この、ホン・サンスの『逃げた女』は女性の解放をテーマにした、作品らしい。
溝口の『浪華悲歌』(1936)なら、山田五十鈴が声量のある、透き通った声で、女性の悲哀を、観客に直接、訴えてくれる。

ところが、このホン・サンスの『逃げた女』は、俳優のちょっとした表情の変化と、会話の流れ、細かい構成の積み重ねなどで、物語と登場人物の真意を、確かめる、必要があるみたいだ。

ところが、オレは、溝口に比べると変質すぎるカメラの、動きに驚いて、それだけでも楽しめた。ホン・サンス作品を理解するには、更に彼の作品を鑑賞する必要があるみたい。

自由な感じのロングテイクで、日常を柔らかく、切り取って行く作風。それは『街の上で』(2019)にかなり似ており、やはりオイラ初鑑賞だった、今泉力哉監督を思い出してくれてニヤリとした。

変な表現に成りますが、今後、ホン・サンスを追いかけるのか、それとも、今泉力哉を追いかけるのか、「宿題」になりました。同時に、ロングテイク技法の持つ、摩訶不思議な更なる魅力の、「勉強」に成りました(^.^)🎵

尚、ロングテイクの固定した画面の中で、ずっと立っていた猫😺ちゃんは名演でした。ロバート・アルトマン監督の『ロング・グッドバイ』(1973)に、出てくる猫ちゃんに匹敵する、忘れ難い、愛おしさでしたニャン🎵

ラストの映画館🎥のシーケンスも、驚いた👀‼️