緑

アーニャは、きっと来るの緑のネタバレレビュー・内容・結末

アーニャは、きっと来る(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作未読

スーパーヒーロー不在で人がいっぱい助かる話。
村の人たちもユダヤの人たちもナチスの人たちも
みんなが自分がやるべきことをちゃんとやる。

ロケーション最高!
空がとても青い。
緑がすごく濃い。
夜はしっかり暗い。
空撮による広大な景色。
アクションが売りの映画ばかりでなく
こういうのをIMAXやドルビーで観せろと。
リアリティはさておき、
美術と衣装もとても良かった。
ずっと眺めていられる。

犬は途中でフェイドアウトするのに
小熊エピソードは回収。
エピローグによると町ぐるみでこれまでも
ユダヤ人を逃してきたようなのに
資本主義の商店のおかみさんは少し軽率。
アーニャだけ別の時空を
通過してきたかのような成長っぷり。
劇伴は基本的に重くて
バリエーションが狭いように感じた。

オルカーダが恰好いい!
恰幅のよさも安心感があるし、
すぐ人に刃先を向けてしまうのも
守るべきもののためだとわかるから不快感なし。
ユダヤ人を逃がそうとしていることは口外無用と
ジョーに強く言っていたアンリが、
ジョーにぶつけられた不名誉な誤解を解くために
全部バラすシーンに感動。
お母さんは正しい正義感。
ジョーとアンリはごめんなさいしたほうがいい。
オルカーダとアンリは末長くお幸せに。

伍長の言動がどうとでも取れる。
ユダヤの子たちを町に入れる際、
教会の外に出てきていた伍長は
たまたま向きを変えただけなのか。
足音が聞こえて敢えて見ないように
背を向けたのではないか。
山小屋の窓を閉めた際に中に人がいるとは
本当に思っていなかったのか。
女子供を山に行かせることへの疑問を投げたのは
ほかのドイツ兵へのアリバイ作りではなかったのか。
アーニャ父と少女を引き連れて行き、
その後のことは本当に「わからない」のか。
立場上逃したことを言えないだけではないのか。
ジョーに言った「成し遂げられたんだな」の
言葉と表情の通りなら
伍長は本当に偶然あのタイミングで向きを変えただけで、
本当に人がいるとは思っていなくて、
本当に収容所に送ったことになる。
娘を愛し自然を愛する佳き父親である伍長が
この物語のスーパーヒーローではないか、
そうであってほしいと思ってしまったのは
自分の勝手な願望にすぎず、
むしろそうじゃない線が濃いことがとても良かった。
今していることに疑問を感じつつも
「成し遂げ」られなかった伍長の不憫さに涙止まらず。

中尉は怖かった。
バッハ聴いて破顔してもまだ怖い。
でも没収しかけたグリム童話を返した辺り、
きっと伍長のようにいろいろ思うところはあるのだろう。
というか、なんのかんの言っても
敵軍を組織しているのもまた「人」だから
みんないろんなことを考えているし、
いい人もいるし、悪い人もいる。
たぶん中尉も仕事に忠実なだけで
性根の悪い人ではない気がするのだけれど、
伍長のいい人さによるバイアスかもしれない。
緑