ryosuke

チャパーエフのryosukeのレビュー・感想・評価

チャパーエフ(1934年製作の映画)
3.4
特に前半は、この時代の作品にしては音楽の使用がかなり謙抑的なのだが、結局環境音も拾わないのに何故ストロングスタイルにしたんだろうか...。会話の音だけが響いているシーンが多くて、ラジオドラマか何かかと思ってしまう。
演技が定型的なのは予想していたが、会話・発話のテンポがずっと一定で、かつ妙に間が空いたやり取りを見せられるのが退屈さを増幅している。
導入部は特にエピソードの羅列感が強く、今何見せられてるんだという感じは否めない。社会主義リアリズムの教条的なつまらなさどうこうとかじゃなくて、そもそも語りが下手なのでは。人物紹介タイムだというのは分かるけど、興味が湧くエピソードや一定の流れの中で出してくれないと。
意外に赤軍の描き方は無謬の軍団という感じではない。豚を盗むシーンなど、兵士が村から収奪していたことが描かれる。「インテリが」という捨て台詞や、チャパーエフが学校を出ていないことを誇らしげに語るシーンなど、やはりそこらへんの意識はあるね。党員であるコミッサールと軍人の友情、連帯を見せることも忘れない。
冒頭、森の方から騎馬隊が一気に現れるシーンなど、大人数を動員した戦闘描写はそこそこ迫力があるが、戦闘シーン以外が長いな。あと、白軍が撃たれて味方がバタバタ倒れているのに打楽器に合わせてゆっくり前進してくるのはかなり不自然な気がする。
ここで終わり?とは思ったが、特定の英雄の結末が重要なのではなく、彼が川で示した不屈の精神を受けて、同志たちがどう戦っていくのかが大事なのかね。これも、個人ではなく集団である労働者階級を鼓舞するイデオロギーなのだろうか。
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