タイトルにもなっている小寺さん自身の主観や心情はそこまでは描かれず、主人公の近藤を始め、周りの人々から見た小寺さんの姿、彼女との関わり、彼女への想いが描かれる。『桐島〜』の桐島と違って、最初から最後まできちんと登場しているが、実は彼女自身は(良い意味で)何も考えていない。マイペースで、ただどこでもポルタリングをやり、クライマーであるだけ。だが、彼女と関わった人は、何らかの変化、成長を遂げる。そういう意味で桐島と同じ存在である。あるいは『アルプススタンドのはしの方』の甲子園バッターとか。
小寺さん本人が変わる、成長する姿を描くというよりは、周りの人が彼女に動かされて変わり、成長する構図で描かれている。(もちろん彼女自身のそういった面もまったく描かれてないわけではない)
近藤、あいか、四条、まゆ、いずれも小寺さんに好意を抱いている点で共通している。
周りの人々から好かれ、影響を与える存在、まさにアイドルであり、だからこその元モー娘。工藤遥キャスティングだろう。
リアルさよりも、ちょっと寓話感があるのも、まさにそのテーマだからこそ。
そして最後の最後、小寺さん本人のドラマ、心情も描かれる。間接キスになったレモンサワーの味、背中をくっつけ合うラストカット。これぞ青春。良き終わり方でした。