リオン66

のぼる小寺さんのリオン66のレビュー・感想・評価

のぼる小寺さん(2020年製作の映画)
2.0
原作未読者によるオンライン試写会感想。

 社会学者の宮台真司によれば、ものを学ぼうとする時に人は三つの動機があるという。一つは、競争動機。勝つ喜び。二つは理解動機。わかる喜び。そして、三つが感染動機。何かというと、直感でこの人すごいと思う人がいて、真似をしていってしまうというものだ。この感染動機がもっとも内発的なものであるので、一番知識を血肉にすることができるという。
 この映画は感染動機を丁寧に描いた作品と言っても過言ではない。

 あらすじとしては、ボルダリングをしている小寺さんによって四人がそれぞれ感化されながら、甘くてほろ苦い青春を織り成していく物語だ。

 小寺さんこそ、まさに感染動機の根源だ。彼女の魅力的なキャラクター造形は今日本が求めるいい意味での空気の読めないキャラだ。つまり、同調圧力には決して屈しない無敵のキャラクターだ。小寺さんがいるのだから映画が魅力的にならないはずはないのだ。そして、小寺さんによって覚醒していく四人がとても初々しく観ていて、とても眩しく微笑ましい。そして、彼らによって観ている我々にも懐かしい熱い気持ちを徐々に共有されていくのが、この映画の最大の素晴らしさだろう。

 けれども、何故か物足りなさが残る。それは、厚みだ。全く持って厚みがない。

 一つは、大人の不在。人物が若者ばかりで、薄くなってしまう。尺の問題もあるのだから仕方ないのかもしれないが、もっと先生以外にも欲しかった。従って、人物の思いの深掘りも年齢なりのものになってしまった。
 
 二つは、小寺さんのキャラクター背景。説明するとつまらなくなるという意見もあるかもしれないが、だとしても少なすぎる。もっと小寺さんを読み解ける道具や言動、人物を配置するべきではなかったろうか。

 そして最大の欠点は偏見だ。偏見があることで薄くてなってしまう。それは多様性を否定することなのだから当然だろう。卓球部に対するイメージ、アイドルオタクに対するイメージ、文化祭に対するイメージ、悪い先輩のイメージなどなど余りにも埃を被ったステレオタイプで悲しくなる。小寺さんを優しく受け止める素晴らしい学校を舞台とするのだからもっとその点は考えてもらいたかった。プライベートなことも先生は大勢の前では言わない。これでは、映画の雰囲気を大きく損わせてしまうことだろう。学校という場所も小寺さんに合わせて欲しかった。

 けれども、現在のコロナの現状の中で人と人が繋がることの大切さを訴える作品を上映することはとても意味があると思う。

 ぜひ、多くの人に観てもらい。小寺さんの元気をもらって欲しい。そして感染動機について考えてもらいたい。