ノラネコの呑んで観るシネマ

のぼる小寺さんのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

のぼる小寺さん(2020年製作の映画)
4.5
みんなの視点を集める先にいるのは、ボルダリング少女小寺さん。
進路希望書に「クライマー」と書くほどボルダリング好き。
彼女のまわりにいる人たちは、のぼり続ける彼女からつい目が離せなくなり、いつの間にか自分もドーンと背中を押されている。
小寺さん自身は最初から最後まで変化しない。
この映画の彼女は、一度も姿を見せず存在だけで学園をザワつかせた「桐島」に近い。
しかし学園のヒエラルキーがベースにあったあの映画と比べると、小寺さんは誰の中にも眠っている青春の情熱に自然に火をつけるだけ。
頑張っている人だけが持つ吸引力。
吉田玲子の端正なシナリオを得て、傑作「ロボコン」の古厩智之監督が登場人物を愛情深く描写する。
上映前の舞台挨拶動画(?)で監督も言ってたが、コロナの今観ると以前の私たちはなんとキラキラした美しい世界に暮らしていたことか。
いつか以前の世界が戻ってきたときのためにも、今できることを頑張ろうと思わせてくれる、元気が出る映画。
「桐島」ほど多くはないが、若い俳優たちが素晴らしい。
しかし、こんな良い映画に客が入ってないのが悲しいぞ。
みんな映画館で小寺さんを見つめよう。
ブログ記事:
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