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破壊の日のmのレビュー・感想・評価

破壊の日(2020年製作の映画)
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限りなく『怒り』に近い『祈り』。のっけから爆音で流れるGEZANの「証明」(歌詞が最高)と共に○○○○○○○○○する。そして台詞で明示されるオリンピック(に群がり食い物にする人々)への皮肉。怒りだ。
『映画』としては粗いというより、かなり語弊はあるけど未完成に近い感じ。勿論あえてそうしているのだけど。映画として完成度を高めるのではなく、コロナ禍の真っ只中の今このタイミングですぐに問いかける為に作られているから、これはこれで正解だと思う。

そう、今この国に必要なのは怒りだ。スクリーンの前に座っているあんたは今怒ってるのか?繰り返される『変われ!』の言葉はスクリーンを突き抜けて観客席に突き刺さる。マヒトゥの強い眼差しと爆音と共に。冒頭に映し出される光輝くダイヤモンド・プリンセス号、あなたは覚えてますか?

鋭利でパンクな豊田節は健在で、豊田映画ファンにはたまらない。全編爆音仕様も痺れる。

「ポルノスター」ではナイフの雨が降り、「モンスターズクラブ」で雪の降る中で瑛太が叫んだりと渋谷のスクランブル交差点と豊田映画とは関係が深い。今回その流れに新たなシーンが加わった訳だけど、叫ぶ彼の後ろを行き交う人達のマスク姿は今この時代の記録として、確かに映画に刻み込まれた。


豊田さんに惚れ込んでいる渋川清彦を筆頭に俳優陣は濃くて豪華だけど、そんな中でもマヒトゥ・ザ・ピーポーの熱演は突出して光っている。
「I'M FLASH!」の時と同じ役名(たぶん同一人物だろう)で登場する松田龍平は、この役で豊田映画に出るといきなり父親似のハードボイルドな色気を出してくるから驚く。窪塚洋介はちょっと役所が分からなかったのだけど、豊田映画で松田龍平と窪塚洋介がすれ違うのを観れただけでサイコーなのでオッケーです。



余談ですがこれかなり特殊な作品で、冒頭の雪降るモノクロのシーンは実は以前イベント上映された「シンフォニー」という短編の一場面だったりする。ちなみに「シンフォニー」の撮影は「モンスターズクラブ」「I'M FLASH!」で豊田組のカメラマンを務めた重森豊太郎氏。そしてエンドクレジットによると、タイトルバックで○○○○○○○○○する実景ショットの撮影は「青い春」「泣き虫しょったんの奇跡」の笠松則通氏。まさかの夢の共闘。キャストだけでなくスタッフ側も濃い組み合わせだった。
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