ちか

なぜ君は総理大臣になれないのかのちかのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

この映画は、野党所属の衆議院議員、小川淳也を17年間追い続けたドキュメンタリー

東大卒で、総務省出身。誰もがうらやむエリート街道を捨て、2003年、32歳の彼は民主党から初出馬した。『ただ社会をよくしたい』という純真無垢で愚直な思いを実現させるために

彼を追うのは、映画・テレビの制作会社ネツゲンの代表、大島新。『園子温という生き物』の監督や、近年ドキュメンタリーでは異例のヒットとなった『ぼけますから、よろしくお願いします。』などのプロデュースを手掛ける。父は大島渚

当初7館で上映スタートした本作も、話題を呼び現在73館まで裾野が広がっている

と、書くと非常に固い映画と思われると思うけど(実際政治を扱うし固いっちゃ固いけど)

これは単純に
『熱い男の人生物語』
 そして
『それに巻き込まれた家族の物語』
 そしてそして
『その男にほだされたもう1人の熱い男』
 の追っかけの物語だと思った
 

真っ直ぐで誠実で、愚直で、、、
党利党益のために動けないと、長期政権の裏で存在感のない野党の中ですら出世もままならない

理想だけではトップに立てない。思惑のうごめく政治の世界で、もがき続ける小川さん
したたかさや、他人を押しのけてものし上がってやろうという貪欲さに欠ける小川さん

監督の大島さんは、小川さんの奥さんと同級生。最初は官僚を辞めて出馬する一風変わった青年に、面白ろ半分で近づいた。ただ撮り続けるうちに、『こんな人に政治を任せたい』と思うようになった。さらに撮り続けるうちに、『この人は政治家に向いてないんじゃないか?』と気付いてしまった


『なぜ君は総理大臣になれないのか』
この"君は"の部分に監督と小川さんの関係性がにじみ出る。そしてこの国の政治の仕組み自体や、有権者である私たちの態度までも問題提起する

秀逸なタイトルと思う


そして、個人的に泣きポイントは、出馬当初5歳と6歳だった姉妹が、19歳と20歳の素敵な女性に成長していたこと。選挙活動を手伝う母と離れるのが寂しくて泣きじゃくっていた少女たちが、父親の一世一代の大勝負の選挙の時、“娘です"とダサいタスキを掛けて身を粉にして走り回っていたこと

父の背中が真っ直ぐじゃないと、娘たちは、きっとついてこない
ちか

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