CHEBUNBUN

エルのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

エル(1952年製作の映画)
3.2
【「めまい」に影響を与えた(?)ホラー】
ホラー映画で一番怖いのは、幽霊でも怪物でもなく実は人間だったりする。人間の心の暗部や、コントロールできない部分が表に出るとひやっつとなる。本作は、その点ピカイチの怖さを誇る。よく、恋バナの席で「あいつソクバッキーで、人の携帯電話勝手に見たりするんだよねー」といった話を耳にする。それはどうやら1950年代にもあったようだ。

ソクバッキーになってしまった男は、段々精神がおかしくなっていき、突然愛を確かめ合いたいとキスをしたり、ロープで「首を絞めるぞ」と脅してきたりする。ただそれだけなら、普通のサスペンスで終わってしまうのだが、本作の怖いところは、そのソクバッキー男から見える視点で描かれているところにあります。

カノジョさえも信じることのできなくなった男の目に映る狂気の世界を、2017年の今ですら見ないようなカット割りで魅せていく。幻覚のように映る嘲笑する人々をあそこまで見せつけられると怖い。

☆「めまい」の原点??
本作はライムスター宇多丸のオールタイムベストに入っていることで有名な作品だが、観ているとあの巨匠アルフレッド・ヒッチコックも大好きだったのではと思わせられる。というのも、教会のらせん階段の上でのサスペンスシーンが「めまい」の有名なあのシーンと完全に一致しているのです。「めまい」は1958年の作品なので、ブニュエルの方が先に撮っている。もしかすると、ヒッチコックは「El」を観て、「めまい」を着想したのかもしれませんね~
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