つのつの

エルのつのつののレビュー・感想・評価

エル(1952年製作の映画)
3.9
これは恋愛映画ではないと思う。
惚れた女に執拗なストーキングをかけ、やっと手に入れたかと思いきや束縛と嫉妬にまみれた夫婦生活を送るという物語に、「恋は盲目」的な可愛げやおかしみが入り込む余地はない。
さんかくの田畑智子みたいな愛おしさは皆無。

オープニング、足を見る主人公の主観ショットですでに彼の「視野の狭さ」を示している。
妻に近づく嫉妬するのも単に自分のステータスの問題で、とにかく周りの目を気にしている。
だからそんな奴に夫婦円満なんて鼻から程遠いものだ。
でもさらにこの映画が気持ち悪いのは、そんな彼を支持する構造が何故か万端に用意されているところ。
途中からもはや妻の身に降りかかる不条理劇に思えてくる。
執事や神父との関係も妙に気持ちが悪い。

ラストシーンもゾッとする。
この歪んだ男を甘やかす狂った構図の行く末は漆黒の闇だ。
つのつの

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