人間の本性にジリジリと迫るドラマであり、またある意味では古典的サスペンス作品。
冒頭の約5分のシーンが完璧に思えた。
厳かな雰囲気の中、主人公の視線によるカメラワークと登場人物の表情になぜかゾワゾワするのだ。
その「なぜか」がストーリーが進んでいくうちに勘付き、確信へ変わっていくのが余計に怖い。
愛が狂気を創り出しうる。それは人間の本能的部分に実は近いのかもしれない。
男が豪華な館の中で起こすあるアクションは、こちらまで気が狂いそうになるロングショットにおさめられていた。しかしそれが皮肉にも美しい。
謎をうまく含ませながら徐々に明かしていくように見せる、ストーリー構成のおかげでハラハラ感が増幅する。
静かなラストシーンの中に、さり気ない大きなサインにゾクゾクした。
現代では感覚や偏執病への理解など昔と比べて大きく変化しているからこそ、この作品のテーマに対する考え方で賛否両論あるかもしれないが、この作品が構成や的確な心情描写で秀でていることは間違いないだろう。