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君は永遠にそいつらより若いのPOPのレビュー・感想・評価

4.4
こんなにリアルに過不足なく、大学生女子の日常感覚…特に印象的なのは普段は全く意識してないレベル、だからこそタチの悪い男性社会への鬱屈した意識を掬い取った映画は無かったんじゃないかな。主演佐久間由衣の他者に対する遜った会話(それが嫌な感じに見えずに非常に魅力的なのだけど)が彼女の中にある男性への怒りや恐れによるものだということがうっすらと見えてくる序盤。
なんの話なのかはよく分からずプロットが見えてこないのに何故だか画面から目が離せない。ふつーの大学生の日常描写を映画的に切り取るだけで魅せてしまう演出の手腕に驚かされた。

見終わってみて、なるほど。この映画は主人公が努力して変わっていくというよりも、素敵な出会いが奥手な主人公を勝手に変えてくれるという日常の中にある奇跡がテーマになっている映画だったのだなと涙が出る。
正直中盤観ていてノッキングしそうになるところはあった。それは、変われない主人公が自分を「他人の気持ちを汲み取れない欠落した人間」と自己評価してだから処女なのだと話すが、その欠落がドラマの軸になりそうでなっていないからだと思う。
そこまでで恋愛になりそうになる男性2名に対して主人公の不器用さをもう少し描いてくれれば。プロットのほとんどないエッセイドラマとしてかなり乗って見れたんだろうなと思う。

だけどもフェリーの中で初めて堀貝が猪乃木に想いを伝えるシーンは感動的である。堀貝の欠落は青春の普遍的な欠落=他者との距離感が分からない事であり、猪乃木との偶然の出逢いが勝手に彼女を変えようとしている瞬間!だからこそもう一度ラストで2人のツーショットは観たかったけれど、少女が大人になる瞬間を映画は見事に捉えたと言えるだろう。

男性社会への鬱屈という視点で語るならいやらしくない絶妙なバランスでその要素を入れ込んでるのが良い。堀貝には男友達もいるし、普段はモラハラ的にいじられても「負けることは想定内」という意識でいるという感じが非常にリアル。想定した以上のことは考えないように、傷つかないように生きている。普通の人が描けているからほとんど何も起きない映画が人を惹きつけるんだと思う
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