近本光司

国葬の近本光司のレビュー・感想・評価

国葬(2019年製作の映画)
3.5
1953年3月3日、ソビエト連邦に属する諸民族の労働者や農民たちのもとにスターリンの死の報せが駆け廻る。モスクワだけではない。ウラジオストクにも、タジンにも、ビリニュスにも、そしてキエフにも。放送を聞く民衆は一様にこうべを垂れ、帽子を脱ぎ、独裁者の死を悼む。歎き悲しむ者もいる。この仰々しい国葬がなされたあと、10年も経たずして国家の英雄は大犯罪者となった。やがて各地に建てられたスターリン像の多くは破壊された。そうした歴史のその後を知っているだけに、この映像はいっそう興味深い。それではプーチンはどうなるのだろう。21世紀の独裁者の死にさいして、はたして涙を流す民衆はどれぐらいいるのだろうか。プーチンの像はどれくらい建てられるのだろうか。そしてそれはまたすぐに毀されることになるのだろうか。すべてがあまりに虚しく思えてくる。