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私は隠れてしまいたかったのbirichinaのネタバレレビュー・内容・結末

私は隠れてしまいたかった(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2021年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞
最優秀作品&監督&主演男優賞!!!

やや長尺だった感はあるが、期待通りの映像美とエリオ・ジェルマーノの怪演が楽しめた。老け顔を作る特殊メイクがよくできていた。

この主人公のように、幼い頃に一番信頼している人(主人公の場合、養母:実母と兄弟は食中毒で死亡、新聞には父親が殺した説も)に「お前の頭には悪魔が棲んでいる」と言われ続けたら、誰でもおかしくなると思った。
養父母や学校の同級生など、周囲がみな主人公に冷たくあたる。虐げられ続けた幼少期の体験が主人公の性格を頑なにしていったように思った。もし優しかった実母が生きていたら、あるいは養母がもっと彼を理解していたら、学校か病院に包容力のある先生が一人でもいたら、生まれながら異質な面があっても、もっと社会になじめて幸せな人生を送れただろうに、運が悪かったんだなと思う。
主人公の顔が、少年時代はピュアな表情なのに年を重ねるごとに意固地な人相になっていくように感じた。幼い頃や若い頃は親身になってくれる人が周りにいないのがかわいそうだったが(せっかく知り合った優しいシニョーラはローマに引っ越してしまう)、画家や彫刻家として身を立ててからは、やたらと自分は芸術家だと言い、芸術家であることにアイデンティティーを見出そうとしているところが哀れだった。
心を寄せるレストランの娘は主人公のことを嫌ってはいない、というかまんざらではないように見えたが、娘の母親がしっかりガードしていて恋が実らず、、、新婚生活用の家まで準備していたのにかわいそう。。

スイカの屋台、テーブル席も用意してあって面白かった。20Lと書いてあったが、どのくらいの貨幣価値なのだろう? 誘惑女優の手に落ちなかったのはmeno male!

脳梗塞(?)で右手がマヒして、結婚の夢も叶わず絶望のどん底だが、最期にあんなふうに優しいお母さんが迎えに来て「Andiamo(行きましょ)」と天国にいざなってくれたのが救いだ。

この画家の絵はあまり好きになれなかったが、エンドロール直前のモンシロチョウの絵はよかった。自分へのご褒美に蝶を描くと言っていたので、気に入った作品に加筆したのだろうか。ゴッホに似た画家と言われているらしいが、ゴッホには弟のテオという理解者がいたから、まだよかったかも。
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