「悪は存在せず」
アイロニカルなタイトルに興味が沸き鑑賞(もう観てからだいぶ経つけど)
日本と同じ死刑存置国のイランが舞台。4話で構成されているこのオムニバス映画は、死刑囚や被害者に纏わるストーリーではなく、死刑執行人をフィーチャーしている点がちょっと珍しい。死刑制度の賛否は一旦横に置いといて、執行する側の日常生活を切り出し撮すことで、人が人を処する行為の非日常が浮き彫りになっていた。
当然ながら執行人は何も感じない機械ではなく、私たちと変わらない血の通った人間。時に当たり前過ぎると意識されずに議論の俎上にも上がらない。過去の人間が作り出したシステムに乗っ取り職務を遂行する。言葉にするのは簡単だけど、そこには様々な苦悩と葛藤がある。必要悪は本当に必要なのかということを普段ほとんど意識していないことに気付いた。
検閲の厳しいイランから果敢に世界へ発信した本作。日本でもこういった視点の映画がもっと増えて欲しい。
《東京国際映画祭2020》