大鳥涙

悪は存在せずの大鳥涙のレビュー・感想・評価

悪は存在せず(2020年製作の映画)
4.0
如何にもベルリン映画祭好みの社会派映画だった。
社会の仕組みの中で、人を殺めざるをえない人がいることの不条理。悪は存在しないものの、殺めた人とその周囲が不幸になるように、殺められた人の多くにも関係する人はいて、底なし沼のような世の無限地獄に愕然とさせられた。こんなシステムの国もあるんだ。
声高く死刑反対を訴えず、社会の必要悪として描くことで、寧ろ強いメッセージが喚起された。これも映画の力だ。また、前半2話の閉塞感から、後半は遠景の自然下で無力な人間が強調され、その意匠もよく計算されている。そんなところもベルリン好みで、ベネチアなら無冠だったかもしれない。
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