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涙の塩のmingoのレビュー・感想・評価

涙の塩(2020年製作の映画)
4.2
相対評価でこの傑作が多くの人に届かないのが心残りなので敢えて言っておく。 「一昨日来やがれ」て書いてる輩がいるけどガレルからしたらおまえが「一昨年来やがれ」だし、本作が1.5点なわけがない。20代にはまだこの恋を、想いを理解するのには50年早い。 70歳を過ぎたのに瑞々しさ(よりかは男を理解しまくったヤリチンプレイボーイクズ男の思考回路を自由自在に操るガレル?カリエール?がやはり凄いとしか言えない。)を超えた燻された描写力に舌を巻く。ベルタの撮影が良いのはもちろんなので毎度お馴染みダンスシーンが良いのなんて当たり前、そんなことはどうでも良くてとにかくカリエールのシナリオが凄え!!(遺作に相応しい。来月の大島渚の「マックス、モンアムール」は行かねば)と同時に、急に時間経過を施したカットで切り替わっても画面の見やすさは持続、洗練された編集も凄え。「脚本」と「編集」で映画は形作られていくと改めて実感。観てる最中は確かにそこまでな印象値なのに、限界まで削ぎ落とされているため点数が引けない。

ラストにジャミラに会おうとしたのは「今度ならヤれる」かもしれないという浅はかな思考では絶対に無くて「過去に縋る」という男の防衛本能ならぬ回帰行動。会ってみたらべツィ(今カノ)と居候とじぶんの三角関係も進展があるかもしれないという微かな希望を自己に見出したいがため。「卑劣さ」は「正直さ」に直結する(父親の前では素直であり誠実、そのギャップも見所)、どこまでも愚直なクズ男の恋愛譚いや人生譚。人が真っ白いキャンバスに、恋をしたら色を塗りつぶすように映画もまた新しい恋に塗りつぶされていく。前作「つかのまの愛人」の方が優れているという見方が多いかもしれないがこの映画の寄り添い方は特別。冒頭のバスの中のジャミラのうだつの上がらない暗い表情から街へ繰り出したときの豊かな表情変化、そしてリュック(主人公)に抱いた恋心が芽生える乙女チックな顔の切り取り、映画のカットは無駄がなくデザインされている反面、寄りになったときの刻みこまれたシワひとつの複雑さとのバランスがあまりにも素晴らしい。時を超えた恋人たちの在り方は時代が変わっても変わらない。ロメールの恋愛映画をシンプルナイズドしてめっちゃ観やすくしたような映画だけど、振り返ると「死んでも残るヒトの深淵さ」みたいなんがボディブローのようにあとから身体を蝕んでいる。
誰が何と言おうと私はこの映画を肯定したい。わかった口をたたくシネフィルは映画をみまくって映画を知るより、出会える場に行きまくって恋をして女性を知る方が先決な気がする…

もがいてもがいてうまくいかなくて、でも大好きで、死ぬほど人を好きになったことがある人なら絶対刺さる映画だと思うんだけど、今年仕事が激務なため新作全然みれてないが恋愛映画における現時点ベストが出たかもしれない。なぜ私は一人で映画観ているのだろう、共有できなければ生きてる意味がない。。。観終わった後みにきてた加瀬亮・宇野祥平・柄本佑の「ムーンライト下落合」組に中原・上條コンビが楽しそうに会話してる映画みたいな場面に出くわして混ざりたかった…涙は塩です、しょっぱい。
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