KnightsofOdessa

日子のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

日子(2020年製作の映画)
3.5
[流れ行く静かなる日常] 70点

窓の外を眺めながら雨風の音を聴く男、リー・カンション。体感10分くらい続くこの冒頭が本作品の全てを示している。一度は引退宣言をしたツァイ・ミンリャンも長年の盟友リー・カンションが病気に苦しんでいることを知って、それを映画にしたらしい。作中でも病気の治療中であることは朧気に明かされる。彼の患う病気については分からないが、多少なりともチラついた"死"という概念に対して、リー・カンションの生きた証をこの世に刻んでやるよ!という気概も感じなくはない。

本作品は意図的に字幕を排している。それは二人の孤独な人間は、言葉を発する機会もなければ、発したところで互いに伝わらないからだ。ということで、基本的にはボーッとしてたり料理を作ったり寝てたりと自由気ままな"時間"そのものを描いている。途中、私の記憶が抜け落ちている部分もあるのだが、彼ら二人がホテルの一室で会うシーンのキラキラした感じは眠気が吹っ飛ぶほど忘れがたい。オルゴール、良き。
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