moridon

タイラー・レイク -命の奪還-のmoridonのレビュー・感想・評価

4.0
待ってました。エンドゲームから約1年、久々のルッソ兄弟×クリス・ヘムズワース。そして監督はエンドゲームでスタントコーディネーターを務めていたというサム・ハーグレイヴ。こんなの面白くないわけがない。

肉弾戦や銃撃戦の迫力は言わずもがな、爆走する車のボンネットの上に監督自らが乗って撮影したカーチェイスシーンは圧巻。メイキング映像が超すごい。シビルウォーやエンドゲームの胸躍るアクションシーンの数々は彼の功績が大きかったのではないだろうか。

もちろんアクションだけでなく、ジョー・ルッソの脚本も素晴らしい。息子を失った哀しみと彼の死に向き合えなかった自分への罪の意識からか、タイラーは常に自分の死に場所を求めているかのようだった。タイラーは命を掛けてオヴィを守り、贖罪を果たしたのだ。

ラストシーン、タイラーと思しき人影がオヴィの元に現れて物語は幕を閉じる。タイラーは生きていたのか、それともあれはオヴィが見た幻覚に過ぎず、タイラーがオヴィの胸の中に生き続けていることの暗示なのか、はたまたまったくの別人なのか。幅広い解釈ができるあの終わり方はとても秀逸だと思ったが、どうやらインタビュー記事を読んでみるとあれは製作側の意見の対立によるものだとか。

ジョー・ルッソとハーグレイヴはタイラーの死を断言していた。オヴィという生きる理由を見つけたタイラーは過去を受け入れ、今守るべき命のために自らを犠牲にした。その贖罪により、彼の物語は完結したのだという。自分もこの解釈に同意である。

しかしテストオーディエンスの意見は真っ二つに割れたらしい。そしてNetflixオリジナルフィルムの幹部であるスコット・ステューバーもタイラーが生きている方が良いと意見を述べた。彼によるとインテレクチュアルな満足いく結末とエモーショナルな満足いく結末は別物であり、少年がタイラーに生きる理由を与えた、だからこそ彼は生きているという結末の方がエモーショナルであるとのこと。うーんなるほど。このインタビュー記事、結構面白いので原文読むのオススメです。英語もそこまで難しくないので。

妥協点を探った結果、曖昧な終わり方にすることで観た人それぞれが違った解釈してくださいってことにしたみたいだけど、これで正解だったと思う。ルッソ兄弟、今後も新作が3本ほど控えているみたいで超楽しみだ。

“You drown not by falling into the river, but by staying submerged in it.”
ツラい現実に溺れそうになった時、このセリフを思い出そうと思います。
moridon

moridon