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まともじゃないのは君も一緒のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.3
 成田凌くんがコミュ障の役かと周りのコミュ障の人々を思い浮かべながらため息をついてしまったし、 いくら映画出演だとしても主演でもないのに小泉孝太郎さんもよくこんな役を受けたとしみじみ思った。『まともじゃないのは君も一緒』とは良く言ったもので、まともが何に対してのまともなのか?令和のいま、何を世の中のまともの指標にしていいのかがわからない中で(政治家も官僚もテレビも嘘ばっかりじゃないか)、18歳の考える「まとも」に一回り近く上の大人が振り回されるのがたいそう滑稽で、まるでNON-STYLEの漫才を見ているようだった。石田さんが井上さんを使って何かやらせようとするんだけど、その度に揚げ足を取るアレです。

 実は〈恋愛経験ゼロ〉の香住(清原果耶)は周囲の異性にも友人にも恵まれず、孤独なハイ・スクール・ライフを送っていて、「ここではないどこか」を夢見ているんだけど、その「ここではないどこか」が結果的には半径数mだったというのが今作の限界だという気もする。近年の日本映画の傾向として、主人公や主要キャストの親兄弟が一人も出て来ないことに由来する狭い世界観が少々問題で、今作も主要な登場人物4名以外にも、君島彩夏(山谷花純)や柳雄介(倉悠貴)ら脇を固めるキャストも引き伸ばせばある程度表現の余白があるのだけれど、監督の世界観が内に内に引き籠もり、なかなか外に出て来ない。この筋立てならば、戸川美奈子(泉里香)の父親で宮本功(小泉孝太郎)の仕事上のパートナーとなる人物はしっかり出さなければならないと思うのだが、残念ながら彼が出て来ない時点で片手落ちなのは否めない。

 コミュ障の男がA子とB子に突然言い寄られる物語としては『モテキ』が真っ先に連想されるし、2人の主従関係が逆転したOJT(On-the-Job Training)の流れもなかなかユニークで興味深いのだけど、男があまりにも戸川美奈子側に引っ張られ過ぎているのがアレだなぁと率直に思った(大人はやはり大人の恋愛に引っ張られてしまうのかも)。両方の糸を手繰り寄せようとすればするほど捻じれるのが三角関係の真理だとするならば、ラスト15分の高揚感が今一つ物足りない。大昔の藤田敏八の映画では、一回りどころか二回りも歳の離れた男女の恋愛が描かれ、初老とも言うべき男はすっかり枯れた様子で茫漠とした人生を生きていたのだけど、令和の今は絶食系男子を草食系女子がラジコンして一本釣りするんだから、思いっきり隔世の感があるなぁ。恋愛の駆け引きや流れよりも、とにかく成田凌くんの魅力がそこかしこに溢れた映画です。タイトルの題字の個性的な文字にはなかなかに目を奪われ、まともな題字とは何かを考えさせられました。
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