ピちゃん

まともじゃないのは君も一緒のピちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

めっちゃ面白い。特に、序盤は2人の掛け合いが最高で声出して笑った。素敵なセリフがたくさん出てきて、メモするのに必死だった。キャストも良かった。全員適役。成田凌が良い役やってるの久しぶりに見られて、私は嬉しいよ。彼の特徴的な笑い方や、笑顔を作ってからすぐ真顔に戻る独特の表情がアクセントになっていて、とても良かった。清原果耶も相変わらず、演技が上手い。細かい表情だけで、心情の変化が伝わってきた。

普通。この作品で何回出てくる?この言葉。一生分聞いたかも。恋愛を通して予備校の生徒と講師が、ずっと普通とは何か?を模索するストーリー。普通が分かってるつもりで分からない主人公が、普通を知らない予備校講師に普通とは何か?を教授するところから物語は始まる。主人公は、同級生達のような普通の人を軽蔑していて、自分は周りと違うと信じて疑わない。愚かだよ。だから、あんな胡散臭い男に騙されるんだよ。先生が、「君はそういう世の中を斜めに見るようなところがあるから、恋人が出来ないんじゃないかな」と言った時に、よく言った!先生!と思った。けど、聞いてる私も耳が痛いセリフだったわ...。

普通がどんなものなのか?を知っていることって生きていく上ですごく大事だと思う。環境に即座に適応して空気を読むこと、相手の欲しい言葉をあげること。全て、普通を知らないと出来ない。だから、先生達は普通を知ることが出来て、良い経験になったと思う。終始、2人ともずっと言い合いしてるけど、何だかんだ楽しそうだった。なんでも言い合える関係いいよね、羨ましい。主人公が、途中で先生を恋愛対象として好きだと気づくところ。可愛かったな。普通じゃない先生が放つ言葉は、どれも真っ直ぐで嘘がないもんね。それってすごい魅力的。私も好きだなぁ先生。

好きな人と話すときは話す内容が気にならない、かぁ。確かにね。納得した。話す内容じゃなくて、その人自体に関心があるからね。どんな話でも楽しいのよ。逆もまた然り。興味ない人の話の内容も全く気にならないよね。どうでもいいから。宮本もそうでしょ?彼女が高校生ってことすらも知らなかった。彼女に興味がないから。宮本は最初からきな臭いし、ろくな男じゃないと思ってたけど、予想通りだったな。この女、自分に好意あり、だから、行為もあり?じゃないからね!?尊敬してた人がこんな愚かなやつだと知るとさ、一瞬でも支持してた自分に対しても幻滅するよね...。自分の純粋な気持ち踏み躙られて。腹立たしい!先生も私と同じ気持ちだったのは嬉しかったな。大切な生徒を傷つける人間、許せないよね。先生、その感情は「普通」だよ。

ここで終わらないのがこの作品の素晴らしいところ。最後のシーンで先生が、主人公に向けて放った「宮本さんは君が辛いときに言ってほしいことを言ってくれる人だったんだね」というセリフ。素敵だなぁ。こうした理解を示してくれる人、なかなかいないと思う。結局、他人から見たらどんなにクズで嫌な奴でも、自分が欲しい時に欲しい言葉をくれる人間って、その人とっては魅力的なんだよね。どんなに悪い奴であっても、そいつの言葉がその時の自分の助けになったことは、揺るがない事実だったわけで。だから、全てが悪だとは言い切れない。宗教とかもそうだよね。騙されていようがなんであろうが、本人がそれで救われているケースもたくさんある。そこが難しいし、それに気づける人って珍しいから、あんなセリフを言ってくれる先生って本当に貴重な存在だと思う。「君が言ってる普通は何かを諦めるための口実なのか?」という先生のセリフ。これも刺さった。確かに、普通を盾にして諦めたり、逃げたりすることある。ただ責任逃れしたいだけ。普通って自分の頭で考えなくても良いからとってもラクなんだもん。でも、そんな普通を免罪符にしてはいけない。普通であることに囚われてしまうと、自分の本質を見失ってしまうから。改めて気をつけようと思った。

2人とも結局、最後は「普通」にうんざりしてたけど、それって贅沢な悩みだよ。嫌でも普通に縛られている人間がたくさんいる日本で、普通じゃない生き方ができるならばそれに越したことはないと思う。2人がこれからも2人らしく楽しく過ごせますように。

追記
・予備校であんな大声で肉体関係がどうたらとか話すのも、予備校講師と生徒があんなにプライベートで親密なのもどうかと思う、そこがちょっと気になった。