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最後にして最初の人類のenniのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
5.0
鑑賞直後は「すごい...なるほど...」という印象しか持てなかったけど、日常に戻ってから数日後になってジワジワゾクゾクと「未知なる体験をしたのでは...」と考えている。
単なるSF小説の映画化とカテゴライズするには静かすぎるし、映し出されるのは現に実在するもの。かと言って単なるヒーリングムービーでもヒーリングミュージックでもない。座席に座ってから始まるのは未来に生き残る私たちの子孫との会話。映画を観たのではなく、その中に入ったというか。もはや自分も登場人物の一人という感覚。未来との交信を経験したと思ってしまう。
そう思えば、終始映し出される虚無感漂う映像の被写体である荘厳なスポメニックの数々は、私たちに言葉ではない何かで何かを(何やねん)伝え続けているように思えてくる。過去からのメッセージを映像で観ながら、未来からのメッセージを聴く。
現実世界からこの未知の世界線に導くヨハン・ヨハンソンの音楽にももちろん圧倒された。心地の良い、親しみのあるような音楽かと思えば、ティルダの声からも感じる危機感と使命感と諦観と希望と畏怖などを表現しているような音楽まで。音楽と言葉が波長を合わせて身体に染み込む感覚は本当に一種のアトラクションに近かった。
生きていない未来に想いを馳せることすら生きる喜びなのか、悲しみなのか。どっちみち人間らしい。完全読本も買ってしまった。宇宙が終わった後の世界(世界という言葉選びが適切かは怪しい。)について考えすぎて怖くなって泣いていた幼少期に連れ戻されたようでドキドキする。また泣くか。原作も読まないとね。
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