1942年、第二次世界大戦中のフランス。
生きるための嘘で身の安全と食を確保できるようになるジル。一方でほかのユダヤ人たちは強制労働や虐殺の日々。物語後半ではその対比とジルの葛藤からの行動が見どころのひとつです。
またナチス親衛隊の男女の人間ドラマも深く掘り下げられています。昔の軍隊に限らず現代社会においてもありうる話です。コッホ大尉の二面性は、大尉という(ちょっと下の)階級と生い立ちがそうさせているかも。自分を強く見せたくもなるでしょう。
ラストは極限の状況下が生んだジルの記憶力と、もうあれは才能ですね。
それにしても、本当に大変で嫌な時代だったと思います。当時のナチスの収容所では多くの人が生きることを選べずにほぼ無抵抗で虐殺された。
物語ではジルは生きるために嘘をつき通します。
なんだか
目的のためにはとにかく手段を選ばずに生きるのか。
それとも
目的に到達できなくても己の信念や美学を大切にして覚悟を決めて生きる(死ぬ)のか。
戦時下ではないけど、自分の生き方を問われているようにも感じました。
最後に、イタリア人兄弟の兄弟愛とジルへ"借り"を返すシーンは、自分にも弟がいるだけに心を揺さぶられました。
子供の頃に一度きりでしたが、年上のいじめっ子から弟を守ってやれなかった記憶は今も消えません。だからこそ大人になった今は、という思いです。