KnightsofOdessa

The Metamorphosis of Birds(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

1.5
[祖父と祖母と"ヒヤシンス"と] 30点

監督のロンドン留学が始まった時期と重なるようにして、故国ポルトガルは未曾有の経済危機に瀕していた。この困難な時期に実家を離れた監督は、より故国を知りたいと思うようになり、その目を自分の家族へと向けた。本作品は、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートのビジュアル・コミュニケーション修士課程で撮影した2014年の短編『Metaphor, or Sadness Inside Out』を基に、その要素を引き継いだ長編デビュー作である。ベルリン映画祭エンカウンター部門に出品され、同部門の批評家連盟賞を受賞した。

船乗りだった祖父は祖母を家に置いたまま一年のほとんどを海の上で過ごし、祖母は一家の家長という立場だった。彼女は監督が生まれる2年前に亡くなっているので直接的な面識はないのだが、監督も母親を亡くした経験から、父親がその母親を亡くした喪失感と自身の持つそれを重ね合わせるように家族の過去と故国の過去を探求しく。その動機について私が口を挟む余地はないのだが、読み上げられる祖父母についての述懐に合わせて画面に登場する隠喩的な映像は、喪失感を埋める以上に独善的でただの自慰にしかなっていない。この映画に関して監督に必要な媒体は文字と音であり、本当に映画にする必要性は感じない。

"鳥の変身"というのは祖父が子供たちのことを"小鳥"と 呼んでいたことに端を発するらしい。悪い意味で悦に入って自己完結した思い出映画の題名としては最適なのではないか。やってることはペトラ・コスタ『Elana』に近いものがあるんだが、本作品は圧倒的に"感情"が足りていない気がする。
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