矢吹健を称える会

砕け散るところを見せてあげるの矢吹健を称える会のレビュー・感想・評価

2.7
 珍作だと思う。オープニングの「ヒーローが云々」いうモノローグの時点で、めちゃめちゃ歪なものを見せられているという気持ちになるし、中川大志がトイレに閉じこめられた石井杏奈を助けるシーンの演出とか、なんなんだよと思いながら見ていたけれど、見終わってみて、嫌いな作品ではない。

 良いなと思ったのは上履きとか朝の待ち合わせとかいった反復描写と、はじめて堤真一が登場する畦道のシーンで、特に後者は、堤真一ってうまいんだなあと(まことに失礼ながら『39 刑法第三十九条』以来)見直してしまった。あと、今作でも清原果耶はとっても良い。

 ただ、モノローグの多くが不要もしくは逆効果だと思うし、「UFO」を画面に映すのも意味があるとは思えない。
 ラストで『インターステラー』か大島弓子『ダリアの帯』のようなすごい境地に達するのもびっくりしたが、ここの仕掛けのために冒頭の歪なモノローグがあったのかと思うと、「そこまでするほどのトリックだろうか」と思わなくもない(調べたら原作小説も同様の構成だそうですが……)。