ラウぺ

マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエットのラウぺのレビュー・感想・評価

3.8
お馴染みのシェイクスピアの戯曲を題材としたセルゲイ・プロコフィエフのバレエをマシュー・ボーンが新解釈したものを映像化。
舞台は近未来、反抗的な若者を収容し矯正する施設「ヴェローナ・インスティチュート」。男女は別々に収容し、交流も限られるなか、看守のティボルトはジュリエットを独り占めすべく、強引に小部屋に連れ込んだりしていた。そこに両親に連れてこられたロミオが入所してくる。所内のダンスパーティーで知り合った二人はたちまち恋仲になるが・・・

オリジナルの全曲版は2時間半ほどの演奏時間ですが、本作の上映時間は約90分。
冒頭の音楽も全曲版のイントロダクションとは違い、冒頭からあの有名なテーマ。
モンタギューとキャピュレット、あるいはジェッツとシャークスのようなグループの対立はない代わりに、抑圧された若者の体制に対する反抗心をシンボリックに描くことで、オリジナルの要素を大胆に改編し、刈り込んだ時間の中にストレートにメッセージを織り込んでいきます。

オリジナルでティボルトと対決するマキューシオは今回ゲイの入所者として描かれ、思いがけない悲劇に見舞われます。
そのことがきっかけでロミオとジュリエットに悲劇的結末をもたらすのですが、物語が悲劇へとなだれ込む展開はシンプルなだけに大きなインパクトを残します。
その中で二人の恋の描写のなんと妖艶で、美しいことか。
想像を超えた状況でバルコニーの場面も用意され、シンプルなセットを縦横無尽に使い切り、文字通りあっという間にクライマックスを迎えます。
驚きのクライマックスでも二人の迎える悲劇に思わず涙してしまうのです。

ロミオとジュリエット以外にも狂暴なティボルトの踊り、入所の男女のメリハリの効いた群舞など、どこを切っても見事というほかありません。
プロコフィエフの音楽は抒情的な部分が大幅にカットされ、ワイルドでエキサイティングな音楽が前面に出ることで近未来のイメージが強調された演出となっていますが、このスピード感溢れる演出には似つかわしいと感じました。
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