フクイヒロシ

未来は私たちのもののフクイヒロシのレビュー・感想・評価

未来は私たちのもの(2020年製作の映画)
4.0
日本語タイトルが死ぬほどつまらなそうだけど、仕方ない。
確かに『未来は私たちのもの』で合っている。

未来はあなたのものだし
この映画が表しているのもそれ。


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上映後にドイツにいるファラズ・シャリアット監督とオンラインで質疑応答がありました。

監督曰く

「移民の人に質問する時「どこからどうやってきたか」ばかりを聞きがちだけど「これからどこに行こうとしてるのか」は聞かれない。」

自身もイランからの移民2世である監督ならではの実感のある言葉。

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主人公は、イランからの移民である親を持ちドイツで生まれたドイツ人男性。
しかし、家族や従兄弟はイラン人だしイラン文化を大事にしている。
ドイツ人からはドイツ人として扱われないし
イラン人からはイラン人として扱われない。
自分のアイデンティティの確立が難しい。


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主人公の恋の相手は、イランからの難民で、難民施設で暮らすゲイ男性。

イランには戻れないし、かといってドイツでも居場所はない。


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移民と難民の違いはあるけど、
ルーツ(過去)やアイデンティティ(現在)のことに縛られて未来のことが考えられていない点はどちらも同じ。

自分でもイメージできてないし、周りから未来のイメージを持たれたことがない。

ものすごく制限された未来しかないように思わされている。
(実際そういう状況にあるにしても)


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いやいや未来は無限に広がってるぜ
君だってヒーローになれるポテンシャルはあるんだぜ

ということを表現しているのが「セーラームーン」。

そして、ラスト近くの突然のMV的な映像シーン。
突然ポップスターのミュージックビデオ的振りや、コンテンポラリーダンスのような動きをつけられた登場人物たちがハウスミュージックに合わせてビシッと決める。

全然物語とつながらないシーンだし、なんの脈絡もない。。

でも当然わかる。

ラストのものすごく制限された話の展開の中で、このMVシーン。

「大丈夫!まだできる!ヒーローにでもポップスターにでもなれるエネルギー自体は君の中にある!」というメッセージかと。