lp

リトル・ガールのlpのレビュー・感想・評価

リトル・ガール(2020年製作の映画)
5.0
東京国際映画祭にて鑑賞。

ユース部門の「TIFFティーンズ」からドキュメンタリーの『リトル・ガール』。
今年のTIFFティーンズ3本の中で、個人的な本命は今作ということもあり、期待して鑑賞。
そしてこれが期待を大きく上回る今年の年間ベスト級の大傑作だった!

男の子の身体に産まれ、女の子になりたいと願う幼い「サシャ」と、その家族に密着したフランスのドキュメンタリー。
「もしも自分にトランスジェンダーの子どもがいたら」と想像を張り巡らせながら鑑賞したのだけれども、見事に映画に打ちのめされた。と言うよりも、自分の無知と甘さを痛感させられた。
「周囲からの無理解はあるだろうけれど、自分だったら子どもの背中を押す」ぐらいの気持ちで観ていたのだけれども、今作はより具体的な現実の問題を突き付ける。例えば「近い将来、子どもの身体に性的な特徴が顕在してくる事を如何に捉えるか」といった難題は、今作を通じて初めて直面し、考えさせられるものであった。わずか85分のドキュメンタリーである今作にすら盲点を付かれたのだから、実際に「サシャ」が抱える苦しみや「サシャ」と向き合う家族が直面する困難は、私では到底想像できないものがあると感じた。

上記の通り題材の時点で既にノックアウトされてしまった今作だけど、単純に映画としても素晴らしい。そして、面白い。
今作は家族に密着するドキュメンタリーであるけれど、核に「サシャの受け入れに難色を示す学校に対して、家族が立ち向かう」という要素を取り入れ、映画を推進していく。その中で周囲からの無理解に苦しむ家族の姿や、献身的にサシャを支えんとする家族の深い愛情、「初めての友達」や「自分の着たい服を自由に着る」といったサシャの細やかな喜びを映していく。
これだけでも観ているこちらの心を揺さぶるには充分すぎるのだけど、映画はあくまで幼いサシャを映しているのであり、今後もサシャの人生には様々な難題(例えば前述の身体に性的な特徴が顕れることなど)があることは、容易に想像される。それゆえに、今作にはより強く心を動かされた。
また、ラストにはサシャを支える家族の今後も難題と向き合う「覚悟」とも取れる言葉があり、この家族の姿にも心を打たれる。

ドキュメンタリーであるけれど、映像から伝わる感覚としては劇映画に近いものがあり、グイグイ見入ってしまう点も素晴らしい。

日本公開を期待したい傑作ドキュメンタリー。オススメです!
lp

lp