Dumbo

リトル・ガールのDumboのレビュー・感想・評価

リトル・ガール(2020年製作の映画)
4.5
息子たちはそれぞれ違う高校に通っていたのですが、

どちらの高校も今年から制服が変わり、
男女関係なく着られるものになったそうです。
ブレザーのデザインはひとつで、
ボトムズはスカートでもパンツでもどちらを選んで着ても良いそうです。



『トム・ボーイ』に似た作品だとは思ってましたが、こちらはドキュメンタリーだった事に驚きました。



「女の子になりたい」

“なりたい”といっても、
サシャはすでに自分は女の子だと思っているのに、
世間がそれを許さないから、「なりたい」と言わないといけないのです…
それも、無邪気に夢を語る普通の幼い子どもとは違って、それはとても切実な願いなんです。

女の子なのに、学校に女の子の服を着て行けない。
バレエ教室でも女の子の衣装を着させてもらえない…

サシャの毎日は生きているだけで辛い事の繰り返しなのです。


2歳といえば、まだ物心つくかつかないかぐらいの年頃…

そんな時からサシャの性自認は“女の子”だったそうです。

この映画の時もまだたったの7歳で、
辛いはずなのに
泣かずに静かに微笑むサシャを見ているのは、とても切なかった。

精神科医の先生に
「私と二人だけで話す?」と聞かれても
話さないと首を振る。
おそらくお母さんに心配をかけないため。

自分の思いの丈を全部先生に話せばいいのに…
と、そんなサシャを見ていてまた切なくなった。


両親や兄弟にとっては、
サシャはサシャ以外の誰でもなくて、
男の子でも女の子でも関係なく、
“大切なサシャ”

そんな大切なサシャの苦しみを毎日見ているお母さんの苦しみ…
自分が女の子を欲しがったから
今、サシャを苦しめている…
と自分を責めている。

サシャの毎日を守るため、
懸命に奔走するお母さんに深く共感しました。
子どもの幸せを守るためなら、
母親は何でもできる。


このお母さんをはじめ
お父さんも兄弟も、
家族みんなが思いをひとつにして、
思うように生きられないサシャのために闘う。

お兄ちゃんがすごく頼もしくて…
お兄ちゃんと言ってもおそらく10歳そこそこだと思うのに、
とても大人でかっこいい!
弟も、無邪気にサシャを女の子だと思っている。
本当に素敵な家族だった。


お母さんの言葉がとても心に残りました。

「人は皆それぞれの役割があって、
 果たすべき使命が誰にでもある。
 サシャがここで生きているのは
 みんなの意識を変えるためよ。」


サシャが
身体は男の子で心は女の子でも、
誰にも迷惑はかけないし、
誰も傷付けない。

それなのに…
お母さんも言っていたように、
どんなに説明しても考えを変えない人は
残念ながら一定数いる。

サシャのバレエの先生もそうだった。
ロシア人で
「私の国ではそんな子はいない」と
言っていたという事だけど、
いないはずないですよね。
きっと言えないだけで。
この先生は、どうしてサシャが女の子の衣装を着ることを許さなかったんだろう?
女の子の衣装をサシャが着たら、
この先生に何の不利益があるというのだろう…⁇


日本にもいますよね、たまに。
トランスジェンダーの人のことを“オカマ”と平気で言ったりする昭和の感覚のままのおじさんとか…

その感覚、アップデートしてよ!
と同世代として恥ずかしく腹立たしく思う。

学歴に関係なく、
人を傷付けないための知識と教養は身につけておくべきで、
いくつになっても常に意識をアップデートしていくことは、
人として大切なことだと思う。

そうやって、
誰にも優しい世の中になってほしいな。




これからもサシャが成長していく過程で、辛い出来事や、心ない言葉に、
たくさん傷付くんだと思う。
大人になってもずっと…
それが、きっと現実なんだと思う。


ジャケットの可愛い“女の子”が
サシャです。

女の子として堂々と踊る
この幸せそうなサシャが救いでした。

こんな幸せなシーンが
これからのサシャの人生にたくさんありますように…
と、切に願った。



最後になりましたが、
Netflixで配信が始まっていると教えてくださったむぅさん、
ありがとうございました!!




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