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瞽女 GOZEのjamのレビュー・感想・評価

瞽女 GOZE(2019年製作の映画)
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瞽女さんは歩くもの
うれしいこんだね

楽しげに歌いながら
山道を歩く

その姿は旅の母娘か姉妹か
けれどよく見れば、彼女たちは前を歩く人の荷に手を触れ、もう一方の手に持った杖で足元を確認しながら歩いていることがわかる

そう、瞽女(ごぜ)さんと呼ばれるこの女性たちは
目が見えないのだ
三味線を奏で、語りものを歌いながら、
山間部の村々をまわる「盲目の女旅芸人」

江戸時代には全国にいたと言う彼女たち
昭和の世には僅かに新潟などに残るのみに
これは新潟、長岡で最後の瞽女と言われる小林ハルさんの物語

幼くして視力を失い、瞽女となる為に
心を鬼にした母より厳しく躾けられ
師事した二人の親方からは
瞽女として強く生きる力と魂を授かる


画面いっぱいの菜の花畑
ハルには見ることが出来ないけれど
花の匂いで花を知り 季節を知り
耳を澄ませて 美しさを感じ取る

耳で鼻で肌で舌で

何でもみえる
…生きてる


ただでさえ、芸事の世界で生きるのは大変なこと
ましてや山間僻地を旅するなど、私たちの想像を絶する苦労を乗り越えて
それでも明るく、訪れた村の人々にハレの日の歓びを伝えて

主人公ハルを演じた川北のんちゃんと吉本美優ちゃんの二人の渾身の演技に思わず涙が溢れる
母と親方のそれぞれの愛に胸を打たれて


新潟出身なのに、瞽女さんのことをひとつも知らなかった
時代を越えて、私たちに真摯に生きる姿勢を教えてくれる


暗闇の世界に居ながら
希望の光に包まれていたハルの言葉

良い人と歩けば祭り
悪い人と歩けば修行


…うれしいこんだね…
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