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僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46の1984okのレビュー・感想・評価

3.8
曲の持つメッセージ性と平手という絶対的センターにイメージが先行してしまって、最後まで追い付けなかった欅坂というグループの終焉が結構シビアに描かれていて、観ていて辛かったといえば辛かったです。というより必然的かもしれませんが、欅坂より平手友梨奈にかなり焦点が当たったストーリーでした。
では欅坂がこういう形で終わってしまったのは何でだったのか。ドキュメンタリーを観る限りですが、まずはコンセプトや演出、曲や振り付けを含めた運営。
そもそもの話ですが背負ってるものが他のアイドルの比じゃないくらい壮大で重くてしんどい。その上、最初から納得のいく、満足のいくパフォーマンスなどではなく"勝ちに行く"という表現を使っていて、できなければ負け、まるで戦場で命を懸けて勝ちを目指すみたいな価値観が欅内で蔓延しており、そのために自らは強くならなければいけないという強迫観念が無意識に生まれてしまっていた感じがあります。さらにその中でもセンターを務めた平手はずばぬけた表現力で他を圧倒しており、全員で集まれば強いはずだったのが平手がいるからこそ強いみたいな意識に変わっていた事。平手がいるから欅坂、いなければ欅坂じゃない。
想像するに難くなくこれに打ち勝てず、それに甘んじた運営、メンバー、ファン全てがいつまでも平手に頼っていたせいで平手は精神的に崩壊し、それが一心同体と化していた欅坂の崩壊にも繋がったのではないかと。櫻坂への改名を前向きなお別れと言っていましたが、正直全然そんなもんじゃありません。平手に取り憑かれた欅坂を捨て去るしかなかった、後ろ向きなお別れでした。
そして平手さんの表現力は今までもテレビで観ていて凄いなとは思っていましたが、何か凄いというよりも畏怖の念を感じるような上の次元のレベル。初期の段階から普段は柔らかな表情を見せながらパフォーマンス中はまるで全てを切り裂くような、狂気的な視線を感じました。ステージ上では理性がぶっ飛んで機能を為してなく、人間が普段本能的に隠しているような感情や欲望を感性のままに曝け出している感じ。全てがダダ漏れで死にそうになっている姿に生を感じる、そこに我々はドキッとさせられるのではないかなと思います。
あと何よりも思ったのはドキュメンタリーというものは生の真実をそのまま映し出しているものと思いがちですが、この映画のメンバーのインタビューを聴いてもいてもどこか本心を隠しているような、真実を口にしてない雰囲気を感じ取ってしまいました。嘘と真実というサブタイトルは我々鑑賞者が、今観ているものが嘘なのか真実なのかを見定める必要があることを問われている感じがして、その意味で秀逸なサブタイトルだなと思いました。
何はどうあれ櫻坂へと改名したグループ皆さんの御活躍、御多幸を祈っています。
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