いなせなマホ

ドント・ルック・アップのいなせなマホのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.5
レビューno.14:
とても面白かった。ふざけた設定のコメディだけども、現実でもあるある!と思える内容は皮肉がきいていて秀逸だった。

デカプリオやジェニファー・ローレンスが隕石が地球に落ちて人類は滅亡するという情報を大統領に伝えた時の、大統領の対応は観ていて腹が立つものだけども、テレビでジェニファー・ローレンスが人類は滅亡すると叫んでる姿もそれはそれで気持ち悪いものだった。

それはグレダを観ていて感じることと同じで、正しいことを伝えるには、正しい手順が必要だということ。世界は自分中心で動いているわけではない。何かを規制するということ、何かを変えるということは、そこで従事している人たちの生活を変えることになる。そこへの思いやりのない発言は敵を作るだけだとこの映画を観ていても思う。

それにテレビで地球が滅亡すると叫んだところで、混乱を引き起こすだけで、何も解決にならない。地球が滅びる可能性が高いとはいえ、滅びなかったら責任はだれがとるのか。隕石が地球にぶつからなかったら誰が責任をとるのか。ぶつからなかったのに、そのパニックで自殺したり、その混乱で事故や犯罪で死んでしまった人の責任は誰がとるのか。

民主主義は意思決定に時間がかかる。それでもみんなが納得するまで話あうことに価値を置いているはず。故に緊急事態では機能不全になるのも仕方ない。それが嫌なら独裁国家を受け入れるしかないようにも思えた。

とはいえ、現代社会の矛盾や綻びを面白おかしく描いたこの映画は、難しくまじめに現代社会の問題点を指摘する映画よりも受け入れやすいので、思考のスタートラインとするにはとても良き映画に思う。
いなせなマホ

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