まさき

ドント・ルック・アップのまさきのネタバレレビュー・内容・結末

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

全く笑えなくて凄く面白い。

これは子供が見ると理不尽に腹が立つだけかもしれないけど、大人が見ればあるあるネタのオンパレードみたいな感じで苦笑と共に主人公達に共感してしまう。現実社会への強烈な皮肉のこもってる良くできた作品だと思う。1度は観てほしいけど、まあ、何度も観るタイプではないかもね。腹立つし 苦笑

この作品はどちらかと言えば環境問題が元ネタなんだろう。対処しないといけないのに見て見ぬふりして、たまに高感度アップに使ったり、メディアの前でブチギレた活動家をネットミームにして嘲笑したり。

でも、コロナ禍の今この映画を見ると、よりこの映画に出てくる登場人物達を「こんな人は有り得ない!」と一笑に付してばかりもいられないんじゃないかな。自分では何も考えず誰が支持してるとか雰囲気に乗っかるだけで肉眼で見えるまで彗星の存在を信じなかった人々、彗星が地球にもたらす危険性よりも金儲けを重視する金持ち、次の選挙のことか支持率しか考えてない政治家、ほとんど何も考えてない権力者の息子、権力者の意のままに黒を白と言う学者、全てを知っているのに何もできない学者、さらに無力な全てを知らされた民衆。どれも心当たりがあるんだよなぁ。

それにしても、本当にこの映画に出てくる人達は腹が立つ。せこい手で10ドル巻き上げる将軍、自分の保身しか考えてない大統領、大統領のバカすぎる息子、既に金持ちなのにさらに儲けることしか考えてない大企業のCEO、頭軽すぎる番組司会者。悪い人ほど地位が高いし最後まで生き残る。その構造は本当の現実そのものな気がして嫌になる。ミンディ博士とケイトがうんざりして全てどうでも良くなる気持ちに凄い共感してしまう。共感のカタルシスの映画だと思った、

この映画で唯一のフィクションだと思う所は、ブロンテロックに大統領が食べられるシーン。この映画で溜まった鬱憤を一気に解放する素晴らしいシーンだけど、現実にはブロンテロックは現れなくて、悪い人ほど長生きしたりするのが今の世の中なんだよな。

この作品が悪者を皆んなやっつけて彗星も回避してめでたしの話なら、百万回見た凡作でありファンタジーでしかなかったけど、この結末で良かった。この映画はごく普通の社会人として生きる自分に一種の慰めを与えてくれる作品だったと思う。もちろん悪者が滅びる映画の方が好きなんだけど、時にはこういう映画って必要だと思う。
まさき

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