わきお

ドント・ルック・アップのわきおのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.2
◾️21世紀のDr.Strange

アイロニカルな作風が際立つアダム・マッケイの監督作品。
うだつの上がらない天文学者とその教え子が、地球へ衝突する可能性のある小惑星を発見。
地球に迫る危機を何とかして伝えようとするも、政治家や世論は期待と裏腹の反応を見せ…と言うお話。

ふんだんに盛り込まれたブラックユーモアの数々に、最初は笑みもこぼれていたが、段々笑えない状況に持っていく様は巧み。
「人類に迫る危機に対してまともに対応をしない」様は、キューブリックの傑作であるDr.Strangeに重なる部分は多いが、市井の人々にも視野を広げた本作は、より現代社会が抱える問題をエッセンスを加えたアップデートされたものと感じました。

特に白眉だと思ったのは、Don't look up派とLook up派に世論が分断される終盤の展開だ。
特権者階層のごく一握りの人間が、現実を直視する人とそうで無い人に分断し、その対立の溝は深まるばかりで事態がまるで進展しない様は、地球温暖化やCOVID-19のような地球規模の脅威にまさに晒されている現実とリンクし、かなり肌寒い感情を覚えるものであった。

その象徴とも言えるアノ人のシーンは、綺麗事を並べるだけで何も進展しない状況をこれ以上ないほど皮肉を込めて描いた名シーンだと思う。

そして迎える結末は…是非その目で確かめてほしいが、背筋が寒くなるも、自分に置き換えた場合を想像させる深さがありました。

この作品を笑って見られる内が華ですね。全く笑えなくなった時にはオシマイでしょう。そんな時限性もある大変興味深い作品でした。
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