たく

その住人たちはのたくのレビュー・感想・評価

その住人たちは(2020年製作の映画)
3.5
職を失った有名CMプランナーが、高い生活水準への未練から他人の人生を乗っ取ろうとする胸糞悪いサスペンス。主人公の動機がいまひとつ理解できなくて、確かにいちど手にしてしまった裕福な生活を失うことに対する抵抗感は分かるんだけど、あそこまでやる?ってなったし、特に主人公が最後に収まるポストが現実的にあり得ないと思った。全体の進行のテンポ感やサスペンスの緊張感はすごく質が高かったね。主演のハビエル・グティエレスは「嵐の中で」の夫役(ダビド)だったんだ。

かつて有名だったCMプランナーのハビエルが職を失い、懸命に就職活動をするもいっこうに採用されず、それまで住んでた高級マンションの家賃を維持できず安アパートに引っ越すことになる。ここから高級マンション暮らしを忘れられないハビエルが、合鍵でマンションに侵入してある計画を実行していく展開で、まず引っかかったのは賃貸住居で元の住人が引っ越したら鍵を取り換えるのが普通じゃね?ってこと。

ハビエルの取ってる行動は一見すると脈略がなく衝動的に動いてるだけに見えるけど、実は緻密な計画に基づいてることが次第に分かってくるというのが見どころ。彼が最初に断酒会に参加した時点でこの計画を思い付いたと考えると、彼の頭の良さは驚異的ってことだよね。真相を知ってる高級マンションの庭師がハビエルにゆすりを掛けてくるところがハラハラさせて、その強引な解決方法には笑っちゃった(このシーンの映像の見せ方が上手い)。終盤でハビエルがあのポストに収まってるのは、どうも納得いかなくてモヤモヤした。水道の水がしたたるラストカットは、全てが上手くいったように見えて、真相は思わぬところから漏れる(水がしたたる)ということを暗示してるのかも。
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