MasaichiYaguchi

ブックセラーズのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ブックセラーズ(2019年製作の映画)
3.5
紙の本が売れない、出版不況と言われて久しいが、世界最大規模のニューヨークのブックフェアの裏側から、業界で有名なブックディーラー、書店主、コレクターや伝説の人物、そしてニューヨーク派の錚々たる作家たちのインタビューで構成された、このドキュメンタリーを観ると紙文化は未々不滅だと感じてしまう。
“No Book, No Life!!”(本のない人生なんて)というレベルまでにはいかないにしても、読書好きな私にとって本の無い生活はやはり味気無いと思う。
とはいえ、本作に登場する人々は読書家とか愛書家とかいうレベルではなく、書物に取り憑かれたとしか見えない。
例えばアメリカのブックコレクターの一人、マイケル・ジンマンと妻のやり取りが、それを象徴している。
妻がマイケル・ジンマンに問う「本が初恋の相手なのね。私は何番目?」、それに対して20秒考えた末に彼は「6番目。本で生きる者は本で死ぬ」ってことだなとにっこり笑って答えている。
映画では数々の希少本ばかりだけでなく、レオナルド・ダ・ヴィンチのレスターの手稿や「不思議の国のアリス」のオリジナル原稿という歴史的、学術的に高いものも出てくる。
こういう希少本等を売り買いする場としてクリスティーズのオークションが出てくるのだが、やはり絵画や彫刻のような芸術品、美術品とは違うことが浮き彫りにされる。
手稿や原稿のような“一点物”はさておき、本は初版であっても複数存在する。
映画でも言及されたが、本にサインがあったり有名人が手書きで献辞していたりすれば、それは希少価値を帯びるが、そういうのはレアケースだ。
あとブックカバーや装丁が美しかったり、手の込んだものだと同様に希少価値が上がる。
コロナウイルス感染拡大で連休期間中に巢篭り生活を余儀なくされそうなこの頃、じっくり腰を落ち着けて本と向き合うのも良いかもしれない。