ラウぺ

ブックセラーズのラウぺのレビュー・感想・評価

ブックセラーズ(2019年製作の映画)
3.9
世界最大規模を誇るニューヨークブックフェア。そこに集まる人々と本の関わりについてのドキュメンタリー。

ここで扱われる「ブックセラー」とは単なる書籍のバイヤーというより、希少本の蒐集家であったり、それに特別の価値を見出して商売とするせどりのプロ、あるいはそれ以上の、本に取り憑かれた人々のこと。
本に限らず、希少なものを蒐集する人々に特有の、特別の愛情とこだわりがそれぞれから感じられ、それを見ているだけでも興味は尽きないのですが、この映画に登場する人々は単なるブックセラーだけではなく、コレクターからジャーナリストや作家、博物館のキュレイター、アンティークの鑑定士、アーカイヴィスト、研究所の所長などなど・・・実に多様で、本との関わりもさまざまな人々が数多く登場。

希少本の希少本たる所以、またごく特定のジャンルにおけるそれぞれの専門家の存在は単なる書籍というアイテムが持つ実に広範な世界や細分化されたニッチな需要の存在に改めて驚かされるのです。
また、20年もかけて希少本に出会う奇跡の出逢いといった時代からネット時代になり、単なるコレクションが目的ならそれこそあっという間に希望のものが揃う時代に、ブックセラーズたちが生き残ることができるのか、また電子書籍の登場は実体のある書籍を駆逐してしまうのか、といった今日的課題も浮き彫りにして書籍を巡る状況を俯瞰することになるのです。

とはいっても、時代や手段は代わってもそこに扱われるアイテム(=書籍)に対する情熱はまったく変わらずに受け継がれていく、それが映画全体を通して伝わってくるところがこの映画の最も肝心なところだと思います。
モノに支配されて、一般人から見ればなぜそこに特別の価値を見出すのか、もはや理屈を超越したところに蒐集家の蒐集家たる所以があるのだ、ということを図らずも浮き彫りにしていくところがこの作品の、いや登場人物たちの魅力的なところなのだと思うのでした。

「本もまた、その読者を読んでいるのだ」
なるほど、その一言にこの映画の本質が集約されている気がするのでした。
ラウぺ

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