kuro

空白のkuroのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
3.9
普段、悲惨な事件のニュースで胸を痛めることはあってもどこか他人事だった。
この映画で少女の事故死から、今まで深く考えることのなかった当事者たちの人生が、いかにして狂っていくのかを目の当たりにすることとなった。

喪失感、怒り、加害者になってしまった苦悩、善意の押しつけ、部外者の悪意、消えない罪悪感。様々な角度であぶり出す人間の醜悪。

そもそも父親があんなに威圧的でなければ彼女も道路に飛び出すような無茶をせず、仮に事故に遭わずに補導されていたとしたら益々捻れた父娘関係になっていただろう。
人間て失ってはじめて気づくことがあまりにも多すぎる。

終盤この父親にも娘が亡くなってから初めて心を通わす瞬間が訪れる。
取り返しのつかなくなってしまった日々を、それでも生きていかなければならない彼らに差し込む一筋の光にはこみ上げるものがあった。
これほど107分を長いと感じたことはないくらいとにかく濃い内容。
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