Hiroki

空白のHirokiのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.0
愛知県蒲郡市。一度行ったことあるけど楽しい思い出しかなくて、めちゃくちゃいい場所だという印象だったけど、この作品では田舎らしい地方らしい閉鎖性が溢れ出ていてため息がでる。古田新太のいかにもな田舎の保守的なクソ頑固親父っぷりには本当に嫌悪するし、この登場人物の立場に少しは寄り添えるようになるまでとても時間がかかった。藤原季節の漁師の親方に面倒見てもらえなかったらホストになるしかないすっねっていう選択肢の少なさとか、学校で孤立した時に逃げられる他のコミュニティ、サードプレイスになることがないこととか、好きでもない親の自営業をとりあえず継ぐ感じとか、なんとも形容しがたい田舎ねっとり感が作品全体にあふれている。これは自分の地方に対する偏見なのかもしれないけれど。いつも地方に行くと自然が豊かでいいなぁと思うけど東京に住む人間からしたらキラキラして見える田舎も、実際には経済格差しかり、閉鎖的な人間関係しかり、シビアな現実があるんだろうなと改めて感じる。

マスコミの偏向報道への批判はもちろん、市民運動家の気持ちをないがしろにした正義の押し付けに釘を刺していたり、どちらかとただただ可哀想な立場の松坂桃李にも、どこか実は痴漢をしたんじゃないかと疑いたくなるよどみも感じられたりして、様々な立場の人間を冷静にある種突き放した視点から眺めているのが作品のおもしろさ。

他人からは無気力だったり自堕落に見えても、本人的には頑張っている、精一杯やっている。それを理解してもらえずに責められる人っているよね。確か目に見える結果は出していないのかもしれないけどきっと誰かの役に立っている。それに気づいてあげられる人間に僕はなりたいです。全然出来ていないけど。

真実を追求することや正義を貫くことに救いはなくて、僕らはただ心を慰めることしかできないのかもしれない。
Hiroki

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