余りにも突然に中学生の娘が交通事故で無惨な死を遂げる。その切っ掛けとなった、スーパーでの彼女の万引きは事実だったのか？だとしたらそれは彼女自身の意志だったのか？そしてそれは彼女の日常だったのか？残された父親はあれこれ想像し思い込みを持って、関わりを持つ周りの人間たちを追い込んで行く。ここに生前の父と娘の関係に空白が透けて見える。娘の通った学校、万引き現場のスーパー、離婚をした元妻で娘の母親、父親自身の仕事仲間と、関係性やその本人たち自身にも空白が存在する。この父親はもちろん娘を大切に思ってはいたが、不完全な関係性と自身の人間性をこの期に及んで気付かされる。周りの人間たちを道連れにして少しづつ立ち上がる父親とその周りの人間たちに、苦しみと時間が微かな光を当て始める。理解できていなかった娘と、同じ空を見て同様に心動かされていた事実に、“喜びを感じられる”父親がそこにいた。
2021年後半の監督賞·脚本賞を吉田恵輔に、助演男優賞を藤原季節に、助演女優賞を片岡礼子にあげちゃいます。
