Aya

空白のAyaのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
3.9
#twcn

人の弱さしか描かれていない。

でも弱さは悪いことか?

年末に最後何見ようか、ってなった時に"プロミッシング・ヤング・ウーマン"とこちらで、こちらをお薦めされたので。

始まった瞬間めちゃくちゃおもしろい予感が走りました。
吉田恵輔作品なのに劇場に行かなかった自分をもはや恥じるレベル。

職場でセクハラを受ける若いスーパーの店長松坂桃李くんはある日万引きをしてもいないのに呼び止めた中学生を逃走劇の末殺してしまう。

家庭では親に学校では教師と同級生に虐げられ、いつも浮かない表情しか見せず車にボロボロに轢き殺された彼女は亡くなってからはその顔すら跡形も残さずこの世を去った。

店長は落ち込みつつも万引きを主張し、毒親は性的イタズラ目的で因縁をつけたと殴りかかる。

お節介と善意とセクハラは紙一重。
寺島しのぶさん超微妙だよね…。

「人のためを思ってボランティア活動だってしてる!」と主張する寺島さんに

「はぁ?それ偉いのか?」
って言い放つ古田さんの問いは私も同意見ですw
偉いと思ってるから「私はこんなことしてます!」って言ってんでしょ?

しないよりいいし偽善者でもないだろうけどアピールはしたいんだろうね。
善意を働く自分が好きで誇りを持ってるんだよ。
別に本人がいいならいいけど人に押し付けるのは違うよね。

メディアの悪意、田舎の好奇心、偶然の加害者の苦悩。

そして透明のネイル。

我々はとてつもなく哀しいことがあった時、誰かを責めたり何かを壊したりetc...

哀しみは怒りに形を変えることは多い。
どこかにその怒りをぶつけることでその哀しみを緩和させようとする。

しかし哀しみは怒りとなり軽減されることもあればされないこともある。
軽減された時、それは何かを埋めることになるのだろうか?
彼女は戻ってこないのに。

なにか代わりのものを求めてしまうのはそれほど罪か?
ただ哀しみを軽減したいだけなのに。

日本は法治国家である。
その法は時に機能しないことがあるし役割を果たすこともある。
法が適正に動きその役割を果たした時、遺族の哀しみは形を変えるのか?

それでも彼女が戻ってくることはない。

人の死と、残された者について相当久しぶりに考えましたね。

自身を責め真相を探る人は他者から蔑まれる地獄の構造。

それぞれの役割をまっとうすること、つまり自分を守ることで皆が皆いっぱいいっばいだ。

娘を亡くした怒りを他者(学校やスーパー)に向ける父親。
学校はスーパーに責任をなすりつけ、父親はスーパーの店長松坂桃李くんをストーキングし始める。

あの夜道で後ろから古田新太さんにつかられて振り返った瞬間に車が横を通るとことか絶妙よね!

こっちはめっちゃ危なっ!って怖いのに当のぶつかりそうになった桃李くんは車よりおじさんの方が怖い。

謝っても謝っても許してもらえず責められ続け捌け口に八つ当たりしても謝り続けるしか彼にはできないし、それ以外にすることもしたいこともない。

同じ大切な子供を亡くした者同士が顔を合わせて謝る以外にないのか?

このシーンのやりきれなさがもう苦しい…。

弱いことは悪いことか?
重圧に耐えられず逃げることがそんなに悪いことか?

彼は謝っていた。頭を下げていた。
彼女は謝っていた。頭を下げていた。

しかし誰ひとりその謝罪を受け入れず、誰ひとり頭を下げることを止めなかった。
笑わせてくれたのは藤原季節くんだけだよ!

「すいません。美人です」

この重い、辛い世界で唯一爆笑できた。
ありがとう。君は希望だ。

名指しでdisられるイオンはどこにでもあるんだw
これは批判ではなく事実ですし。

吉田恵輔らしいきっつい話っすねぇ!!!

吉田恵輔らしい優しい話ですねぇ!!!

役者さんも皆素晴らしい!
みんな弱くてみんないい。

みんな好きだよ。折り合いなんてつけなくていい。
人間らしく弱く生きて。

人は思いもしない瞬間に思いもしない誰がから評価されることもある。

少しの時を経て父親、古田新太は笑顔を取り戻した。
彼は生きているうちに1ミリも知ろうとしなかった娘を探し出す。

彼女はここにいた。
生きているうちは気付かなかった。
悔いても遅い。
寄り添うのも遅すぎる。

何が悪かったのか?
誰が悪かったのか?

そういう物語ではない。
これの映画は自分の弱さを知った時、どうその弱さと向き合うか?という話だ。

泣く?

責める?

死ぬ?

殺す?

すべてはあなた次第。

古田新太さんのあの台詞、笑えるとでも思った?
なめないで。
私たちはそんなに強くない。

最後に。

彼女はどんな子でした?

あと"恋人たち"の篠原篤さんどこにでてました?!
マイティは分かったのに!!

Aya

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