きなこ

空白のきなこのレビュー・感想・評価

空白(2021年製作の映画)
4.5
黒と白で塗り分けられることなんて、そう多くない。
だから「自分は悪くない」って心からはっきり言える人は、現実世界でもいつもちょっと怖い。

起こってしまったことは変わらない、どうしようって思ったことは、大なり小なり誰にでもあると思うので、すごくヒリヒリする。
中心に描かれる出来事は、さまざまな人の事情や行動が複雑に絡み合っていて、誰のせい、誰は悪くない…とはどうしてもジャッジできない。
(身近に起こり得るからとても怖い。)
解決はできない、だから折り合いをつけるしかない、でもそれが難しい…。
その過程の中で、傷つけあったり、救いあったりする。ちょっとしたことがとても救いに感じられたり。辛くても目が離せなかった。
自分の考えや気持ちを、誰にどう伝えるのか、どう昇華させていくか…難しいなあって思った。
ずっとヒリヒリしていたのに、救いが見えるシーンもあって、観賞後はちょっとだけ、柔らかい気持ちも残った。
この映画は、ずっと自分の心に残ると思うな。

良い人!っていうだけの人が1人も出てこない。
(そもそも良い人悪い人のの判断基準ってなに)
主演2人以外に気になった存在は2人。

1.寺島さん演じるスーパーの店員。
結構毒のある存在で、この物語の中では重要な役割に思われる。
彼女だけは最後まで自分の正義を曲げずに一方的なまんま。
でも独りよがりな正義って、誰の心の中にもあるんだと思う。
結果的に花音さんと重なる女の子に、やる気あんの!とどやしつけて、その子は誰かに寄り添われて去っていき、彼女は一人ぼっちで泣きながら掃除していた。この後の生活の中で、どうなるのかちょっと気になった。
マスコミと対立するけれど、ベクトルが違うだけで実質は似ているような…。

2.趣里さん演じる先生。
序盤は寺島さんと大して変わらない、一方的な人。いやな先生、って思わせるような登場シーン。
彼女が花音ちゃんに言った言葉は消えないし、後悔も消えないけれど、向き合って折り合いをつけようとした人の1人ですよね。
地味に注目していたので、最後の古田さんとのシーンがあって本当に良かったです。
起こったことは変わらないから、後からできることって僅かで、無力なんだろうとは思うけれども、考えて行動して、を積み重ねて、あの人はきっと、折り合いをつけながら生きていくことができるんだろうな、って思えた。


古田新太を救ったのは、とても意外な人物でした。そして最後の絵のところは、ほんと泣いた。

藤原季節さんの役は良い役でしたね!
なんで古田新太を見捨てないのかっていう理由づけがあって納得。

古田さん、松坂さんの演技は凄みがあって、もちろん素晴らしかったです!

2022-4
きなこ

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