広島カップ

アイヌモシリの広島カップのレビュー・感想・評価

アイヌモシリ(2020年製作の映画)
3.9
この作品を観るには三つのアイヌ語の意味を知らなくてはなりません。
一つはタイトルになっているアイヌモシリ。これは彼等が住む土地つまり北海道のことを指します。
もう一つがイオマンテ。これはヒグマなどの動物を殺してその魂であるカムイを神々の世界に送り帰す祭のこと。
そして最後がそのカムイ。神格を有する高位の霊的存在のこと。
(以上wikiより)

舞台は北海道の阿寒湖の辺り、父親を亡くし土産物屋を営む母親と暮らす主人公の青年。彼は現代に生きるアイヌの血を引く14才の中学生。彼の目を通して見るアイヌの文化を観客も同時に体験をする。

ロックバンドを組み、ジョニー・B・グッドを演奏する彼は、父親の死と共にアイヌの文化から離れて行こうとしていた。
そんなある日、亡くなった父親の友人の男から森の中のキャンプに誘われアイヌモシリの森で一晩を過ごす事になる。またイオマンテのことを少しずつ知るに連れアイヌの心が彼の中に受け継がれて行くのでした。

森に入る時には森に挨拶をし、雨の降るの森に癒しを感じ、森と共に生きるアイヌの人々。神から食べ物を与えられることに感謝をして生きる彼達。

美しい森をバックに青年(下倉幹人)の表情をアップで狙った望遠のショットが多用されるが、自分の中にアイヌの血が流れていることに気付いて行く様子が良く伝わる。本物のアイヌの末裔である下倉の精一杯で初々しくも静かな演技が、本作のテーマに効果的に応えている。

カメラも音楽も落ち着いてアイヌの事を伝えていて、彼らを知る良い端緒になる作品ではないかと思う。
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