taominicoco

アイヌモシリのtaominicocoのレビュー・感想・評価

アイヌモシリ(2020年製作の映画)
4.5
本作は、公開前から観たら絶対レビューすべきと思っていたのですが、なかなか言葉が出てこず、鑑賞から一週間経ち、今日に至ります。

2019年に「アイヌ新法」が成立、2020年7月にはアイヌ文化を復興・発展させるため「民族共生象徴空間・ウポポイ」が設立されました。さらに、本作『アイヌモシリ』が公開と、アイヌ文化周知の機会が増えているのを感じます。

わたしも大好きなアニメ『ゴールデンカムイ 』も一翼かと。

カムイとはアイヌ語で「神」を指すそうですが、偶像ではなく、人間を生かしてくれる動植物や自然界のあらゆるものをカムイと呼ぶのだそうです。

アイヌの文化では、野生動物を狩猟し肉を食べ、毛皮を利用することを「カムイからの贈り物を受け取った」と解釈します。

ウサギ、フクロウ、クマ、草花などのカムイと人間の間には、隔たりや上下がない。

アイヌのこの考え方が衝撃的に美しく、それ以来、個人的に理解を深める努力をしています。

本作は、北海道・阿寒湖にあるアイヌの集落アイヌコタンに住む少年・カントの成長物語。

父が死んでからアイヌ文化と距離を置くようになっていたカントは、ある日、父の友人であるアイヌコタンの中心人物・デボに子熊の世話を頼まれます。が、実はその子熊は、アイヌの儀式・イオマンテのために捧げられるものでした。

イオマンテの当日。
大人に対する不信感や失意と共に、アイヌに生まれたことを受け入れたかのような表情を浮かべるカント。複雑な心情が滲んだ彼の佇まいと眼差しが、目に焼き付いて離れません。

どこまでも続く雪景色、動植物の息遣いが聞こえてきそうな”アイヌモシリ”(アイヌが住む場所)は、時折、イノシシやクマやサルがが山から降りてくる、わたしの故郷を思い出させてくれます。

知力や技術を尽くしても、自然には敵わない。

自然に生かされいることを当たり前に感じていた気持ちは、都会暮らしが長くなると薄れますが、本作で原点回帰させられました。

『アイヌモシリ』は、一介の注目だけで終わらず、日本の歩みとして語り継がれるべき作品。多くの人に観てほしいです。
taominicoco

taominicoco