タスマニア

青くて痛くて脆いのタスマニアのレビュー・感想・評価

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
4.0
2020年181本目。

タイトル素晴らしいね。まさにその通りだった気がする。
自分は原作未読だし、予告映像を基本的にあまり信用していないタイプの人間なので、「思ってたのと違う」現象になってもあまりショックを受けない。それが結構功を奏したかも笑

起承転結では表せないけど、物語の流れが変わる転換点がいくつもあったし
「その転換点がもたらす結末がどういうものになるか?」も結構複数パターン想像が膨らんだ。
「叙述トリック」というと大袈裟になるけど、観客の先入観をちょっと利用していた構成になっていると思うし
最悪のシナリオやサイコスリラーに持っていくこともできる可能性を秘めた映画だった気がする。

「面白い・面白くない」「良くできている・良くできていない」とかで評価することは自分には難しいけど
扱っている題材や描き方や役者の演技や結論含めて、「好きな映画」であることは確かだな。(世の中の評価ちょっと低い気がするけど笑)

根本的な設定や前提を勘違いした状態でこの映画を見ていた序盤は
「杉咲花の庶民的な可愛さいいなー」とか思ってた笑
一番感じたのは歯並びが整っていないところ。
笑顔を見せた時の歯並びが美しいことって勝手に芸能人の必須項目だと思っていたけど、それでも笑顔が素敵でヒロインとして凄かった。
秋好が持つキラキラ感が後半の彼女の強烈な一言によりインパクトを持たせる。
あと、杉咲花のちょっとしたイメージが結構ストーリーへの先入観に一役買っていたと思う。キャスティングの妙。

そして、吉沢亮演じる田端のテンション感やキャラクター像と秋好への接し方に既視感を感じて
その既視感の正体が「君の膵臓を食べたい」の二人だと実感した頃には
すっかりしっかりストーリーの構造やこの先の展開に騙されていました笑

位置付けや役割が分かりやすい董介とは対照的に、
川原さんの位置付けが謎に感じはじめたり、
ポンちゃんへの疑念が高まったり、
テンへのイメージがブレはじめた頃に、再び登場秋好。
結構このシーン好き。ある意味二部開幕のシーンだもんな。
攻守が入れ替わると言うか、ヒーローとヒールが入れ替わると言うか。

更に、秋好の「気持ち悪」の一言。痺れた。
このシーンをきっかけに凄惨な逆恨み皆殺しエンターテイメントになっても良かったかも笑
吉沢亮はシリアルキラーにもなれる可能性を秘めてる気がするから、それでも個人的には満足していたわ。

ちゃんと展開に揺さぶられて驚かされたという意味では満足したし
結構描くテーマやメッセージにも揺さぶられたという意味でも満足。

「何者」「劇場」といった「自分を信じて進み続けられること」への嫉妬からくる攻撃的な態度や、その痛さ。
心のどこかで常に他者の成功を妬み、攻撃する機会やきっかけをどこかで期待してしまっている浅ましさや、それを実感してしまう痛さ。
こういうのを総じて「意地悪な映画」と呼んでいるけど、この映画もその部類に感じたわ。
なんか、その辛さや痒さをみんながちゃんと自分を見てくれている学生時代のうちにちゃんと実感することが大事なのかな。
やっぱり「青くて痛くて脆い」っていうタイトル素晴らしいね。

あと、終盤まで川原さんがメインキャラクターとして目立つ理由や位置付けがあまりわからなかったけど
彼女がモアイを再度立ち上げた後に、田端と会うシーンでなんか合点がいった。
むしろかなりのキーパーソンだった気さえしたよ。
川原さんは田端が4年間のモラトリアムを費やして踏み出した小さな小さな一歩を、短い期間でちゃんと踏み出して、変化していけた象徴的な人物だったんじゃないかな。最初の出会いのシーンの彼女のセリフを思い出すとすごく意味ある存在だったように思えた。

「傷つけ」っていい最後じゃないですか。
秋好の表情を一切映さないのも良い演出な気がするぞ。

何より自分は秋好的な痛さと田端的な痛さのどちらも結構持っているバリ痛人間なので、これは微笑ましく見ておかないと心がもたない気がする笑
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