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青くて痛くて脆いのRのネタバレレビュー・内容・結末

青くて痛くて脆い(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人1人と鑑賞。

2020年の邦画。

監督は「映画 妖怪人間ベム」の狩山俊輔。

あらすじ

大学生の田端楓(吉沢亮「一度死んでみた」)は大学の授業中に子どもじみた理想論を発言する秋好寿乃(杉咲花「弥生、三月-君を愛した30年-」)と出会う。秋好のアタックによって自然と仲良くなった2人はサークル「モアイ」を設立するが…。

たまたま予定があった友人と「映画でも観るべ」となって、本来ならレンタルで良いかなと思っていた本作を原作を読んでいた友人の薦めでチョイス。

原作は「君の膵臓を食べたい」の住野よるさん、もちろん未見。

作者曰く「『膵臓』で感動してくれた全ての人たちの心を、この本で塗り替えたい」と語る程の意欲作ということで、期待していたんだけど…。

いやはや、これは今のところ今年一ダメージを負った作品でした…。もちろん良い意味で。

お話は上記の通り、地味な大学生楓と浮世離れした秋好が自分たちが設立したサークル「モアイ(楓がたまたま着ていたTシャツのデザインから)」を通して「世界を変える」活動を始めるというのが概ねの概要なんだけど、それが過去パートで現代パートでは「何者」かに乗っ取られた「モアイ」をどうやらなんらかの事情により追い出された楓が「モアイ」を潰す計画を企てるシーンも同時進行で挟み込まれる。

しかも、現代では秋好は死んでいるという衝撃の事実、吉沢亮の顔のアップが歪む演出からも楓のモアイに対する並々ならない憎しみも感じ取れる。

果たして、楓と秋好の身に何が起こったのか?ってところが肝だと思うんだけど、「この青春には嘘がある」という謳い文句通り、今作にはあるどんでん返しが含まれている。

まぁ、映画を観進めていくと段々と暴走していく楓の姿から勘のいい人ならすぐわかるような内容ではあるんだけど、ネタバレありきで言ってしまえば、実は秋好は死んでおらず、勝手に被害妄想に陥った楓が逆恨みでモアイを潰そうと企てる話だったわけなんだけど、まぁこの吉沢亮演じる楓の闇落ちっぷりが酷い。

夜な夜なサークル部屋に忍び込んで、サークル募集のポスターに誹謗中傷を書き加えたポスターを何百枚も印刷してばらまいたり、SNSにモアイと企業との癒着(故意ではない)の証拠を投下してしまったりとやっていることが完全に悪役サイドのそれ。

で、結局のところ、なぜ楓とはそのような行為に走ってしまったかと言えば「自分を除け者にして、サークルを追い出した秋好に復讐したかったから」という究極的に個人的な理由。

うーん、ダサい!!人間としてダサすぎるw

観る前から吉沢亮の役がものすごく「○○○○○○」だと言われていて、そこまではそんなに感じなかったんだけど、中盤、自分の想いをブチまけた楓に対して対峙した秋好が放つ一言。

「…気持ち悪い」に全てが集約されていると感じた。

かつてここまで心底響く「気持ち悪い」というフレーズがあっただろうか、いやない。個人的にこの一言が刺さりすぎて、走馬灯見えたわw

じゃあ、なんでここまで楓に変わって自分自身がこの一言に心的ダメージを受けたかと言えば、この俺自身が楓サイドの人間だからに他ならない。

丁度この映画を観る前に友人と全く関係ない話だけど、話してたんですよ「スポーツジムにおいていい年こいて一生懸命フィットネスしてるひとってダサいよね」って。

これって全く本作と関係ないかもしれないけど、言ってることは楓の今回起こしてしまった行動に付随する考え方だよなと。

青春を謳歌し、輝いている人、一生懸命頑張っている人をあたかも自分自身が正しいという考えのもと、冷めた目線で「ダサい」「カッコ悪い」と決めつけ、安全圏からマウントをとる。

本当にダサいのはこっちだと言うのに。

でも、だからこそ、わかる。楓は秋好に構って欲しかったんだよな。勝手に見捨てられたと解釈して独りよがりに浸って自暴自棄な行動を起こした、その顛末がこれ。

あぁ、青春とはなんて残酷なんだ、まさに「青くて痛くて脆い」、自分自身青春時代にやってしまった黒歴史を紐解かれたかのようなこの絶望感に、でも映画としてのカタルシスを感じてしまっている自分もいる。

個人的にはその後の展開でダークサイドに突っ切るのではなく、問題行動を起こした楓に一筋の救いをもたらして本作は終わるわけなんだけど、どうせだったらこのままバッドエンドに極振りしても良かったかもなぁ、なんて思っちゃう辺り、いよいよ俺も陰の者として末期なのかもしれん。

まぁ、何にせよ本作は青春映画の傑作秀作出揃う2020年において、青春の闇の部分を残酷なまでに描き切った個人的には忘れられない一本となった。

ただ、しばらくは見返せないかもしれない。
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