滝和也

日本海大海戦の滝和也のレビュー・感想・評価

日本海大海戦(1969年製作の映画)
3.6
皇國の荒廃、
この一戦にあり!

帝政ロシア、大日本帝國
の戦いは日本へ向けて
進むバルチック艦隊と
連合艦隊の壮絶な海戦
へ突き進む…

「日本海大海戦」

三船敏郎が連合艦隊司令長官東郷平八郎を演じ、円谷英二が特技監督としての最後を飾った東宝の戦争大作。東郷ターンと呼ばれた秘策が炸裂した海戦史上未曾有の大勝利と呼ばれた戦いをメインとし、日露戦争を描いています。

日露戦争を描いた作品では明治天皇と日露戦争と言う作品が50年代に大ヒットしていますが、基本は同じ筋立て。史実に忠実に描かれていますからね。ただ、焦点が明治大帝から東郷平八郎に変わっています。

戦史を形どる形を中心に擬えて行きますので、後に増えたメロドラマ調の話はなく、東郷平八郎の勇猛でありながらも苦難の道を歩く姿が描かれ、良くまとまっています。

連合艦隊に倍するロシア艦隊との戦いは日本海から東シナ海の制海権をかけての戦い。ただ…半数以上がバルチック艦隊と呼ばれたバルト海におり、分断されていました。連合艦隊はウラジオストクの敵艦隊を抑えながら、旅順要塞に籠もる敵艦隊を先に殲滅することが急務でした。

そこで乃木希典大将麾下の陸軍と連携。旅順要塞攻略作戦を展開。かの有名な二百三高地ですね。屍累々となったあの戦いが起こる訳です。史実通りガトリングガンの前に突撃する兵士…(T_T)無残極まりないシーンはあります…。

ただ…映画として、作品前半の見どころとして、乃木希典を笠智衆が演じ、三船敏郎と共演。日本が誇る大俳優二人のシーンが見られます(^^) 松竹と東宝の壁を越えて。二人の朴訥とした演技がまた味があるんですよね(^^) また前半には仲代達矢が日本のスパイ明石大佐として欧州で暗躍。ロシア革命側に資金を与えながら、バルチック艦隊の動静を探ります。これも日露戦争の結末を早めた行為ですよね。仲代がスマートで格好良くて(^^)。

後半は円谷英二渾身の大海戦。バルチック艦隊の動きを掴み、海戦に持ち込む連合艦隊。そして東郷ターンが炸裂。バルチック艦隊を殲滅する大海戦。特撮の粋を尽くした素晴らしいシーンを描き出します。ミニチュアと実写の合成、カットバックや編集が巧みで大迫力です。更にミニチュアでの火薬の使用が流石円谷英二です。艦砲射撃の迫力が違いますね。

三船敏郎は正に動じない東郷平八郎を見事に演じます。その立ち姿だけでも様になる。また人間であるゆえに弱い部分も僅かな表情変化だけで演じていますし、重みが違いますね。

大勝利の戦いを描くわけですが、ただただ戦争礼賛と言う風潮ではなく、犠牲となる人々も勿論描かれています。杉野!杉野はいずこ?で有名になったシーンを有名な方が演じてますからね。三船敏郎は東郷平八郎として、苦渋の表情を崩さないですし。

日露戦争の勝利により日本は数々の國から尊敬を受けた訳ですが、故に列強から睨まれていきます。また勝利に酔った軍部の突出が太平洋戦争へと突き進む原因であったのは史実として正しいです。海洋国家としての在り方に、この時代気付いていれば…より多くの犠牲を出さなくともよかったはずですが…残念ながら歴史にイフは無い訳で…。

作品としては、史実を描きながらも、エンターテイメントとして成立した作品だと思います。東郷ターンの見たい方は是非ですね。
滝和也

滝和也